一九七試合目 ページ14
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「秀一、美味しいねー?」
すり下ろした林檎を食べながら、秀一はもっさもっさと口を動かす。ごっくんと飲みこむと、もう一口とあっと口を開けた。
「ねー?じゃなくて。俺に林檎は剥いてくれねえの?」
半分残った林檎を見て、洋一が言う。
此処は病院。洋一の見舞いに貰った林檎を、秀一に食べさせていた。
「自分で剥く?」
「は?何、怒ってんだよ!」
「怒ってませーん」
嘘、怒ってる。
秀一を連れ、病院を訪れた時の事。
ナ−スステ−ションを横切ると、丁度洋一の話をしていた。
「個室の倉持さん、プロ野球選手なんですって。知ってた?」
「へえ。でも確かに、ガッシリした体型してるもんね」
「私、タイプなんです」
そう言った看護師さんをチラリと見ると、胸がデカくて可愛らしかった。
まさに洋一のタイプ。
「だから担当を直々に申し出た訳?」
「はい」
しかも洋一の担当の看護師さん。
そして私はたった今、機嫌が悪い。
「パパのお見舞いの林檎食べたら帰ろうね?」
このままだと、林檎食べにきたみたい。
でも秀一がいるから、長居は元々出来ない訳で。
「あ、明日洋一のお母さん来るから。着替えとか持って行ってもらうね」
「…Aは来ねえのかよ」
「私は、秀一がいるし。夏も置き去りにされて、私と秀一が洋一に会いに行ってるの知ってるから機嫌悪いし」
朝だって、幼稚園じゃなくてパパのとこ行くってずっと泣いてたんだからね。幼稚園に五回行ったら、パパに会えるって約束してやっと泣き止んだけど。
「なら、夏も休ませれば良いだろ」
「一回休ませたら癖になるでしょ」
「…じゃあ退院する」
「は?」
この人は急に、何を言うの?
「退院って。洋一、絶対安静って言われて」
「痛くねえ」
「ダメ」
「じゃあ、林檎剥いて」
「じゃあっておかしくない?」
「……折角、いつもより長く居られると思ったのに、なんだよそれ」
拗ねたように唇を尖らせる洋一の姿に、キュンっと胸が締め付けられる。
「仕方ないな、もう」
そして林檎に手を伸ばした時、突然秀一が泣き出した。ふぎゃあぁっと泣く秀一を見て、そっちに腕が伸びる。
「どうしたの?」
そっとお尻を触ると、オムツが濡れているのが分かった。
「オムツ替えようね」
声を掛け、ゆらゆら揺れると秀一が泣き止んだので、病室を出てトイレへと向かった。
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aaa(プロフ) - 何度もコメントしてしまい申し訳ありません。私はこの作品が一番大好きです!毎日繰り返し読ませていただいています。この作品が読めなくなるのはとても寂しいです。素敵な作品を生み出してくださって本当にありがとうございます(;_;)やっぱり残して欲しい作品です(;_;) (2018年3月18日 13時) (レス) id: 0e392a7902 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - aaaさん» コメントありがとうございます(^^)パシリシリーズから読んで頂いて有難いです!妊娠中の話も面白そうですね♪これからもよろしくお願いします!! (2018年1月28日 15時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - パシリシリーズから面白くて一気に読んでしましました!倉持が大好きでいつも更新楽しみにしています^_^パシリシリーズから夏ちゃんが産まれるまでの間の話とかいつか読んでみたいな、、!と思っております☆これからも更新楽しみにしています^_^ (2018年1月21日 10時) (レス) id: 0e392a7902 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - サンさん» サンさん、コメントありがとうございます!ハイキュー夢ばっか更新してすみません←頑張りますね。これからも応援よろしくお願いします(^^) (2017年11月20日 21時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
サン(プロフ) - 更新頑張ってください!応援してます!! (2017年11月19日 19時) (レス) id: d100eeddb0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年7月17日 14時