一八二試合目 ページ46
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「パパ、帰ってくる?」
もう何度目の台詞だろうか。椅子に座り、脚をぷらぷらさせながら夏がそう問いかける。私は眉をハの字にして頷くと、「夜遅くなったらね」と付け加えた。
「遅いってどのくらい?」
「夏が寝てる時になるかな」
「じゃあ、夏寝ないっ」
これも何度目のやり取りだろう。一つ溜息を吐き、そうですかと適当に流す。まぁ明日は保育園が休みだし、洋一が帰って来た時に起こしてもいいかな。そんな事を考えていると、秀一がびえ〜んと泣き出した。まだ風邪の秀一は、熱やら鼻水に苦しんでいて、目を覚ます度にサイレンのように泣き出す。
ワガママを言う夏、風邪に苦しむ秀一に振り回されるばかりで、掃除やら洗濯などこなせない家事が増えていく。
今日、何度目かの溜息を吐いた。すると口を窄め息を深く吸い込む夏の姿が目に入る。
「どうしたの?」
「吸い込んだよ」
「何を?」
「ママの幸せ」
溜息吐くと、幸せが逃げるっていうもんね。
夏の一言にほっこりして、スリッパをパタパタ鳴らしながら秀一の元へと駆け寄った。
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〜♪
聞き覚えのあるメロディーが耳に入り、思わずガバッと身体をおこした。辺りを見渡すと私の両脇で夏と秀一がそれぞれ眠っと居る。カーテンは開け放したままで、すっかり暗く鳴っといた。鳴り続けるスマホの音と明かりを頼りに、手を伸ばす。起きたばかりの私にとって、スマホの明かりは眩い。目を細め、画面をろくに見ることむなく、記憶だけを頼りに着信ボタンを押す。
「はい?」
あまりの自分の声の低さに内心、驚く。それは電話の向こうの相手も同じようで、えっ?と戸惑う声か聞こえている。洋一ではない声にハッとした私は、目を覚まし、その場に正座してスマホの画面を見る。画面には御幸くんの名前が表示されていた。二、三度咳払いしAですと名乗るが、やはりいつもの様な声は出ない。困っていると「風邪?」と心配するような御幸くんの声がした。
「寝起き」
いつもの自分の声に、ホッと息を吐く。
「悪ぃ、起こしちまって。いきなり、こんな事を聞くのも気が引けるんだけど、週刊誌見た?」
「週刊誌?読まない。どうして?」
「実はさ、スクープされて」
「うん?」
「俺と、Aちゃんが」
その時、体調の悪い秀一が起き出してびえ〜んという泣き声が御幸くんの声を掻き消した。
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豆腐戦士(プロフ) - shinox2さん» 秀一大きくなりました(笑)ズリバイしてハイハイしてつかまり立ちして歩くようになるんですね…。そう考えると何だか寂しくなってきました。秀一の成長はゆっくり書こう(*´ω`*) (2017年4月13日 0時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - やだ〜♪秀ちゃん大きくなったのね〜って、親戚のおばちゃん気分でした。これからズリバイとか始めると可愛いですよ。うちの子はなぜか前進せず後退してました。えりさん同様懐かしいです(^-^) (2017年4月11日 17時) (レス) id: 2f52f37027 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - えりさん» えりさん、お久しぶりです( ´艸`)寝返り打てなくて怒ってる!可愛い!ってなって書きました。親戚の子の話なんですけどね(笑)私の作品でお子さんの小さい頃を思い出して頂いて嬉しいです。常に子育ての良いとこ、悪いとこと書いていこうと思ってます! (2017年4月11日 16時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
えり - 中2なった娘と口喧嘩する様になったりして疲れた時豆腐戦士さんの夏ちゃんや秀くんみてて小さい時思い出させてもらってますょ。ありがとうって伝えたくて…。 (2017年4月10日 21時) (レス) id: 4c6f302957 (このIDを非表示/違反報告)
えり - お久しぶりです☆* 夏ちゃんすっかりお姉ちゃんなって…( ; ; )←どこのオバちゃんやw 娘も寝返り壁際で動けんなってブゥブゥ怒ってました(笑)懐かしいです。 (2017年4月10日 21時) (レス) id: 4c6f302957 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年12月10日 14時