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更に私を襲う絶望。
何故なら黒光りの車が私の前で止まったからだ。キッとつんざく音を立て車が止まる。
中からは出て来たのは高そうな燕尾服に身を包んだ男性だった。年齢は四十代後半。丁寧に私に頭を下げて、手を差し出す。
「どうぞ、葉瑠様。お乗り下さい」
「嫌よ」
「そのお身体でご自宅まで行かれるのはご無理かと」
「誘拐してよく言うわよ!」
「使用人が大変失礼な事を致しました」
「失礼なんて言葉じゃ済まされないじゃない。立派な犯罪よ」
「主人を思ってのことなのです。使用人が勝手にしたとは言え、指導不足の私の不徳の致すこと。どうか気の済むまで殴って頂いて結構でございます」
「…そんなこと出来ないに決まってるじゃない」
「葉瑠様はなんと聡明なお方でしょうか。主人が長年、恋い焦がれるのも想像できます」
「…私は結婚して子どもも居るのよ」
「主人はそれでも構わないと申しております。お子様も、葉瑠様の子なら我が子のように愛すとも」
気持ち悪い。
それが目の前の彼の主人に対する印象だった。
姿も顔も、名前も。どんな人かも知らないからこそ、余計に不気味だ。
「お子様がご心配でしょう。どうぞ、お乗り下さいませ。屋敷に住み込みの医者が居ります。優秀な医者です。彼に看てもらいましょう」
抵抗しようとして、止めた。後ろから汚い言葉を発しながら、私を捕まえていた男が追いついてきたからだ。
目の前の男性が、咳払いをする。
「主人の奥様になるお方に言う言葉ですか?」
キッと睨んだ目は鋭く、私が怒られている訳でもないのに肩が強張る。
「貴方はクビです。これ以上の暴挙を許すわけにはいきません」
半ば無理矢理、私を車の中に押し込む。
私を誘拐した彼は、呆然として膝からその場に崩れ落ちる。
主人の存在が、より恐ろしく感じた。進み出した車の窓から、私はひたすらに亮介さんに助けを求めた。
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嬉しいです。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
また、話しはまだ続くので、これからもよろしくお願いします!
豆腐戦士 20170903
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時