【◇】交際期間０日＊３

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父はどんな人かと聞かれれば、完璧主義者と私も兄も答えるだろう。

もし野球で勝つなら、エラーもせず失点もせず０対10くらいの点差で勝たないと気が済まないだろうし、家族だって絵に描いたような完璧な家族じゃないと許されない。

母は綺麗で専業主婦で、長男は一流大学を卒業し跡継ぎに、長女は父の認める男性と結婚。

それが父の理想で、完璧な家族像。けれど現実は思い通りにはいかない。兄は一流大学には進学出来ず、三流大学に進学。その後父の会社に入社したが、週末の野球の為に仕事をやっているも同然。跡取りとして、兄なことは眼中にない。

母は子が家を出てから、殆どアトリエにこもって絵を書いている。子を育て、自由な時間を持てるようになってから、母はそういう生活を続けている。ロクに父が帰ってこないから、そうやって寂しさを紛らわせている。

そして私は、父からすればただの道具に過ぎない。

跡取り息子とそのまた次世代の子を築くだけの道具にしか。





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「え、お父さんが？」

母から定期的にかかってくる電話。いつものように何気ない会話が交わされるかと思いきや、私の期待を裏切り驚かされた。

別れと出会いのどちらも訪れる春のこと、そろそろ結婚し１年が経つ私達に母が告げたのは父からの食事の誘いだった。

「結婚祝いに久しぶりに家族で食事でも、ですって。何考えてるのかしらね」

「さぁ？」

父と食事と考えるだけでストレスを感じる。お腹を擦っては眉間に皺を寄せ、電話口の母の声に耳をすませる。

「一応、大事な婿だからじゃない？」

「一応って…」

まぁ跡取りとして選んだ人だから、父は亮介さんのことを家族の誰より信用している。娘だから分かる。父がどんな人か知ってるから余計に。

「どうせ、あの人の好きなフレンチよ」

「お母さんだって好きじゃない。亮介さんはカレーが好きなんだけど」

「折角のお祝いなのに庶民派の店に行くの？」

「でもお父さん堅苦しい人なのに、高級店行くと余計に堅苦しいじゃない」

「そうだけど、あの人好き嫌い多いし」

それってお祝いにならないじゃない。

まぁ父の接待は面倒だし、セッティングしてくれるなら任せるのが良いだろう。

結婚祝いなら亮介さんと二人で、好きな肩肘張らない店でも家でも祝えばいい。

それにしても、

「お父さん、何考えてるんだろ…」

何となく嫌な予感がする。

溜息を吐いて、またお腹を撫でた。


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