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「そんな暇、あったんですか?」
「は?」
亮介さんが眉間に皺を寄せ、私の方を振り返る。
不思議な気分だった。普通なら怒って修羅場になるとか、子供みたいに泣き出してその場に蹲るとか色んな反応があるのかもしれない。けれど私の頭を支配したのは怒りや悲しみの感情よりも純粋な疑問だった。
「だって亮介さん偶に飲み会行きますけど、一次会で帰って来てましたし、日をまたいで帰ってきたことなんて一度もありませんよ?」
「…そうなの?」
「でも亮介さんは頭良いから上手く隠してたんですか?LINEとか女性と密会したようなメッセージ見ました?」
「見てないけど」
「もしかしてそんな事で悩んでたんですか?」
「そんな事って」
亮介さんが呆れた、という様に溜息を吐く。否、呆れたのではない。多少なりとも驚いているのかもしれない。
だけどここ最近、亮介さんが元気がなかった理由が分かり、ホッと胸を撫で下ろす。
「浮気って、問題にすべきなのは夫にどうやってさせないかじゃなくて、どう夫の心を惹きつけてられるか何ですよ」
「どういうこと?」
「浮気ってダメだって分かっててもしちゃうんですよ。抑圧がかかればかかるほど。あれです。覗かないでって言われて鶴が機織りで反物作ってるところを見ちゃうやつあれと一緒です」
「絵本の話と浮気をイコールにしちゃダメでしょ…」
「私にとっては一緒です。もし本当に浮気していたと仮定しても亮介さんは私の元に帰ってきてくれる。違いますか?」
亮介さんはぽかんと口を開けてマヌケ顔をしていた。けどすぐ微笑むと、そうだねと言って歩き出す。
「だから私は亮介さんが浮気していないって信じます。その人には悪いけどきっと勘違いです」
「葉瑠」
亮介さんが立ち止まり振り返って、優しく私の名前を呼んだ。絡まる視線。そして人目も憚らずチュッとキスをする。
「好きだよ」
「わ、私もです」
「ふふ、顔赤いよ」
「亮介さんこそ、さっきまで落ち込んでたのに現金ですよ!」
「え、何?俺にずっと落ち込んでて欲しいわけ?」
「そういう意味じゃないです」
クスクス笑いながら亮介さんはまた歩き出す。上下に揺れレ肩を見つめていると、亮介さんはむた話し出す。
「俺は俺を信じるよ。葉瑠がこんなに魅力的なんだから、今の俺より長い間いた俺が葉瑠の魅力に気づかないはずないと思うから」
小さく返事する。褒められるのが恥ずかしくて、でも嬉しくて。綻ぶ頬をそっと手で覆い隠した。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時