130* ページ32
(亮介視点)
「はぁ〜…」
本日何度目かの溜息。
明日の会議の為のパワーポイントとエクセルを駆使し、データをまとめる。だが突如として昨日の光景が思い出されて、手が止まり溜息。
そればかりを繰り返していると、さすがに部長に笑われた。
「ハッハ、もしかして奥さんと喧嘩したのか?」
「みたいなもんですかね。挨拶しかしてくれませんでした」
俺の発言に戸惑ったのか、肩たたきを上下に振る動きが止まる。珍しく、ズカズカ相手のプライバシーの領域に入っても全く気にも止めない部長の言葉が詰まる。
目をうようよ泳がせながら「そんな事もあるわな」と呟き背を向けた。
はぁっとまた溜息を吐いて俺は仕事に取り掛かる。が、すぐ集中がキレたので立ち上がり給湯室に向かった。
入ってすぐ、マイカップに闇のように黒い液体を注ぐ。滅多に食べない手土産のお菓子を手にとって、給湯室を出ようとすると入って来た誰かにぶつかりそうになる。
「おっと、」
「きゃっ、ごめんなさい」
思わず仰け反る。持っていたマグカップのコーヒーが跳ね手に掛かったが、目の端に誰かが背中からお尻を着くのが見え咄嗟に手を伸ばし腕を掴んだ。
その拍子にまたコーヒーが跳ね、足下に零れる。
「怪我、ない?」
「あ、係長すみません」
女性は三上さんだった。残念ながら今年入社の彼女の記憶はない。印象として、おっちょこちょいな女の子。彼女を見ると葉瑠っておっとりしてるように見えてしっかり者なんだな。と思い知らされる。
三上さんを起こす為に腕を引っ張ってやると、彼女ははにかんだ笑みを浮かべた。
「助かりました。ありがとうございます」
「俺の方こそ、ごめんね」
言いながら、足下に目をやった。床に出来た茶色い水溜まりを見て溜息を飲みこむ。
三上さんは私も手伝いますと言って、雑巾を持ってきてくれて一緒に拭いてくれた。
ついでにちょっと汚れが気になったので、掃除をする。
「あの、小湊さん」
係長ではなく、名字で呼ばれ驚く。顔を上げると、三上さんが顔真っ赤にしてごしごしと床の汚れを拭う姿が目に入った。
何故か、悪戯が見つかった時みたいに心臓がぎくりと跳ねる。
「覚えてますか?」
「なに…を?」
脳内で警鐘が鳴る。俺の勘か本能がダメだと訴えている。
「私達の関係を」
三上さんが顔を上げた。潤んだ目で俺を見て、手を握られる。
頭の中が真っ白になった。
.
201人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時