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(亮介視点)
「はっ」
新鮮な空気を肺に取り入れる。
顔の輪郭をつーと一筋の汗がなぞると、葉瑠に向けぽとりと落ちた。汗を拭おうと手を伸ばす。すると葉瑠が背中に腕を回し上体を起こした。
素肌が密着する。体温が直に伝わり、幸福感が俺の心を満たした。
「引っ搔いちゃいました。亮介さんの背中」
「痛かった?」
引っ搔かれたと気づいたのは葉瑠に言われたから。行為にいっぱいいっぱで気づかなかった。葉瑠が傷を指で撫でたのか、今更ながらヒリヒリしだす。俺の肩口に顔を埋めているので、葉瑠の顔は伺えないが耳元で幸せそうに笑う声が聞こえた。
「いいえ。痛くなんかありません。亮介さんは」
「大丈夫に決まってるじゃん」
「本当ですか?背中、見せて下さい」
背中に回された腕が離れる。葉瑠に言われるまま、隣に背中を向け寝転がる。
葉瑠の細い指が傷を撫でた。後ろで葉瑠が息を飲むのが聞こえる。
「血が出てます。ごめんなさい」
「背中なんて誰も見ないから大丈夫だよ」
寝返りをうち、葉瑠の方を向く。葉瑠はシーツを引っ張ると身体に纏わせた。ぷうっと頬を膨らませた。
「見ちゃダメです」
「もう全部見たけど」
「それでもダメです」
もうっと呟きながら、葉瑠が俺の目を隠す。一線を越えても恥ずかしがるのが彼女らしい。
「パートは順調?」
俺が入院して以来始めたらしいスーパーのパート。葉瑠はう〜んと唸って俺を見る。
「偶に怒られます」
「みんなそうだよ。俺だって怒られるし」
「大変ですね、社会人って」
「主婦だって休みないじゃん。もっと手伝うよ、家事」
「仕事は五時間だけですもん。大丈夫ですよ」
「パート、辞めたら?お小遣いだってあげるし、欲しい物があるなら俺の給料内なら買ってあげるし」
「でも私接客好きですから。辞めたくはないんです」
「無理してない?」
今更になって、俺が入院した時葉瑠は自分一人で悩みを抱え生きてきた事に気づかされる。最近はよく相談してくれたが、それでも心配だ。
「無理だと思ったら辞めます。それに働く時間を短くして貰ってから平気です」
「ならよかった」
「あの、そろそろ夕飯頂きません?」
「そうだね」
先に起き上がる。そこら中に放り出された服を拾い、身に着ける。葉瑠はベッドで俺が部屋を出て行くのを待つ。
「セーラー服また着る?」
「き、着ません」
顔を真っ赤にして葉瑠が言うのを見て部屋を出た。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時