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(亮介視点)
2014年1月20日
それまでのことは覚えていて、2年後の夏まで記憶が抜けている。
約2年半の月日はあっという間のようで、色々変わっていた。
まずは仕事だ。記憶では転職し二年目の平社員。だが現在は数人の部下を抱える係長。
私生活は結婚し、綺麗な奥さんまでいる。
2年の月日の流れというものは、俺を混乱させるなんていう生温いものではなかった。
孤独だった。ドラマなんかでよくあるタイムスリップだ。ドラマの場合過去に戻る事が多いが、俺の場合は未来。過去に何があったのか知っているのと、未来に飛び空白の2年間に何が起きたのかさっぱり分からない状態と、どちらが辛いかは想像するまでもなく後者だろう。
空白の時間、俺の身に何が起きたのだろうか。何故、高校時代に付き合っていた女性を諦め、結婚したのだろう。
分からない事だらけだが、誰に聞けば良いのかも分からなかった。
コンコン…。
「はい」
昼下がり、本を読んでいるとノックの音が鳴った。どうせ春市と倉持だ。
本から視線を外し、扉に向けるとやはりその二人が立っていた。二人とも固い表情を俺を見て、名前を呼ぶ。
「亮さん」
「兄貴」
そのあまりにも真剣な表情に、俺は思わず噴き出した。
「何?二人ともしけた面して。俺は死にそうなほど、重傷じゃないよ」
「いや、でも記憶喪失って聞いたんすけど」
倉持が不安そうな表情を浮かべる。それを見た俺は、ふっと笑みを浮かべた。
「安心しなよ、倉持のことはちゃんと覚えてるからさ」
二人はベット脇に置かれた椅子に腰掛ける。倉持は果物籠を、春市は頼んでおいた本を持ってきてくれた。
「書斎に野球の本はなかったの?」
「書斎?」
春市の言葉に眉間に皺を寄せる。どんな家に住んでいるか知りもしない俺に、書斎の有無など知る由もない。
俺は脇にやった本を手に取った。毎日来る葉瑠さんが持ってきてくれる本だ。読んだ跡がないので、てっきり毎日買ってきてくれるのだとばかり思っていた。悪いと思い、春市に暇つぶしの本を買ってもらうよう頼んだのだが必要ないようだった。
「あ、そっか。知らないよね」
罪悪感から春市は肩を縮める。
「そ、そういえば、奥さんは居ないんすか?」
「葉瑠さんは、用事があるからって昼前に帰ったよ」
「残念、挨拶しようと思ったんですけど」
そういう倉持の横で、春市が何故か俺に対して鋭い視線を向けていた。
「何?」
そう問うと、春市がゆっくり口を開いた。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時