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キッチン越しに、結城さんと伊佐敷さんがお酒を飲むのを見やる。ふとジュージュー音を発て湧くフライパンの音が聞こえ、IHコンロに視線を戻す。と、亮介さんが豆板醤を大さじスプーンで入れようとしているのが目に入った。
慌ててきゃーっと叫びながら亮介さんの腕を掴む。
「何?」
「そんなに入れたら辛いです!火を噴く辛さです!」
「え?これくらい入れなきゃ美味しくないよ」
「入れちゃダメです!」
「えー…」
「亮介さんのは違うフライパンで作りますから!」
「そんなに必死にならなくても…」
拗ねた様に唇を尖らせる亮介さん。豆板醤を追加しないよう目を光らせながら、小さめのフライパンを取り出し挽肉を三分の一ほど入れる。すると亮介さんは大さじ一の豆板醤を躊躇なく自分のフライパンに入れた。
「か、辛いですよ」
「辛いのが美味しいんだよ」
味噌と豆板醤で挽肉に色がつくまで焼き、豆腐、水や酒、砂糖を入れる。
亮介さんのフライパンにも同じように入れると、へぇっと目を丸くさせた。
「麻婆豆腐ってこうやって作るんだ」
「亮介さんは一人暮らしの時作らなかったんですか?麻婆豆腐」
「うん。丸美屋の麻婆豆腐で作ってた」
亮介さんの料理の腕前は記憶がなくなってからもお手のもので、新婚当初お弁当を作っていた亮介さんの姿を彷彿とさせる。
それが何だか嬉しくて、私は頬を綻ばせる。
「どうしたの?」
「嬉しいなと思って」
「何が?」
「秘密です」
そう言うと亮介さんは私の顔を覗き込んでキスをした。突然の事にビックリして口元を隠す。鼻先が触れ合う距離で亮介さんは話した。
「俺達夫婦なのに隠し事?」
「はぅ…あの」
「リビングに哲と純が居るのに悪い奥さん」
「え…」
チュッと唇が触れ合い、唇を啄まれる。結城さんと伊佐敷さんに見られてるんじゃないかと思うと恥ずかしくて、私はギュッと目を閉じ亮介さんの腕を握った。
「お〜い、亮介。ビールないか?」
亮介さんの唇が離れる。目を開けるとニヤリと笑う亮介さんが目に入った。
「あるよ。持って行く」
冷蔵庫からビール瓶を取り出し、リビングに運ぶ。麻婆豆腐は胡椒と山椒を入れ、水溶き片栗粉でとろみをつける。最後に胡麻油で風味をつけ、完成。
出来た料理をテーブルに並べる。
ご飯を配膳すると白いご飯と一緒に麻婆豆腐をかき込む。
美味しいという言葉を聞かなくても、食べる姿を見るだけで嬉しくなる。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時