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亮介さんに抱えられ移動してすぐ階段が目に入る。亮介さんの首に回した腕に、力がこもる。そしてゆっくりと亮介さんを見上げた。
「あの自分で歩きます」
「奥さんを運べなくてどうするの?」
「うっでも…お、重いですから」
「今の俺もちゃんと鍛えてるから大丈夫」
「でもでも…」
「黙りなよ」
ニッコリ笑うと、亮介さんはキスをして私の口を塞ぐ。
恥ずかしくて私は両手で顔を覆った。
するとその時、インターホンが鳴った。軽やかなメロディーが流れる。指の隙間から亮介さんを伺うと、玄関の方向を一瞥しただけですぐ階段を昇っていった。
「え、え、亮介さん。出ないんですか?」
「うん、出ない」
いいのかな…。
少し迷っていると、またインターホンが鳴る。またも無視したけど、今度は何度も連続でインターホンを鳴らされたので私を下ろして大股で玄関に向かう。明らかに亮介さんは怒っている。
「どちら様?」
亮介さんは無愛想に扉を開ける。扉の向こうから顔を覗かせたのは、顎髭を生やした男性と背の高い男性の二人。背の高い男性はどこかで見た事ある気がしたけど、思い出せない。
「純と哲じゃん、久しぶり」
「よお、亮介。なんだ、記憶なくしたって聞いたけど普通じゃねえか」
「元気そうだな」
「中入る?」
「じゃあお言葉に甘えて」
「失礼するぞ」
大きく開かれる扉。私はハッとして急いで玄関に行って客用のスリッパを置く。
「俺の奥さん。知ってる?」
手で差し亮介さんがそう紹介してくれる。何だか恥ずかしくて、はにかみ笑いを浮かべながらペコリと頭を下げる。
「たりめぇだろ。結婚式の時に会ったんだから」
そう叫ぶ顎髭の男性がちょっと怖い。
「すまんな。俺は野球があって行けなかったんだ」
「哲はプロだもんね。活躍してるの?」
「あ、思い出しました!プロ野球選手の結城哲也さんですね」
スワローズファンの亮介さんとジャイアンツ戦をテレビ中継で観戦してる時に「高校の友達」と教えてくれたのがジャイアンツの選手である結城哲也さんだった。
生プロ野球選手、生有名人。
こんなにも間近にしかも目の前に。思わずほうっと息を吐く。
「こっちの煩い方は友達の伊佐敷純ね」
「ついで感があるな…」
「あ、確か結婚式の時にスピッツって」
「それ、忘れてくれよ…」
伊佐敷さんが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「良かったら、夕飯どうですか?」
何かしなければ。
そういう使命感から発した言葉であった。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時