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(亮介視点)
ヒラヒラ手を振り、立ち去った春香の後ろ姿を眺め、父も母も呆然とする。
ただ俺は喉の奥からこみ上げてくる笑い声を堪える事が出来ず、体を曲げ腹を抱え笑う。
「はは、アハハハハハ!」
「りょ、亮ちゃん?」
「亮介?」
「変だよな。あんな事言われるより、葉瑠さんに離婚届渡された時の方がショックだなんて」
そう言った瞬間、母がハッとした表情をした。さっきまで大切そうに抱えていた離婚届を俺に渡すと、キッチンを出て階段を駆け上がる。
暫くするとマスクをつけた葉瑠さんと一緒にやって来た。辛そうに何度も咳をしている。
「葉瑠ちゃん、辛いのにごめんなさいね」
「いえ」
ゴホゴホと咳をする。俺達を気遣ってか、背を向け咳を繰り返す。
母は俺の後ろに回ると、車椅子を押し葉瑠さんに近付ける。すると葉瑠さんは片腕を伸ばし、腰を引きながらブンブンと手を振る。
「だ、ダメです。移っちゃいます」
「亮ちゃんが来たのは別れ話の為なんかじゃないんでしょ?言わないと伝わらないの!ほら、亮ちゃん」
キュッと下唇を噛み締めた。恥ずかしさやら戸惑いが俺の表情を硬くする。だがその表情を見て葉瑠さんは誤解した様で、ムッとした表情を浮かべ背を向ける。
「もうしんどいので、部屋に戻っていいですか?」
「葉瑠ちゃ…」
「待って!」
腕を伸ばし、葉瑠さんの腕を掴もうとした。またも空を切る。だがさっきと違って、転ぶこともなく葉瑠さんは俺を振り返って、不安そうな眼差しを送った。
このチャンスを逃せば、今後一切仲直りするのは難しいかもしれない。
俺はゆっくり言葉を紡ぐ。
「今日、葉瑠さんが来なくて俺ずっとそわそわしてた。風邪の知らせも、母さんからじゃなくて春市に電話が来たって聞いて嫉妬して、さっきも春香が来てこっぴどくフラれたのに何とも思わなかった」
渡された離婚届をびりびりに破った。そして紙吹雪のように辺りに舞い上がらせると、手を広げて葉瑠さんに言う。
「おいで」
気恥ずかしくて、でも葉瑠さんに触れたくて手を広げた。
彼女はどう反応するだろう。一瞬不安が過ぎったが、涙を流し手を広げ俺の胸に飛び込む彼女を見てそんな不安、どこかに飛んでいった。
「痛っ」
「あ、亮介さん、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。葉瑠…って呼んでいいのかな?」
「勿論です!亮介さん」
そう笑って、葉瑠は俺を抱き締めた。折れた肋骨が痛いと叫んでいたが、そんな事今の幸福感に比べればどうでも良くなった。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時