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(亮介視点)
小説から顔を上げ、時計を見た。もう昼前。いつもはもう来ているはずの葉瑠さんが来る様子がない。
こんなに気にする自分が馬鹿馬鹿しいと思うが、気になるのは事実で。
だからと言って、確かめようにも人の手助け無しでベッドから出られないので、確かめる事が出来ない。
そんな事を考えていると、扉の開く音がした。
来た。
ホッとする自分が居る。
本に視線を戻し、平然を装っていると声がした。
「よう、亮介。元気にしてるか?」
「え、父さん」
この前来たばっかじゃん。
そう思ったが口にはしない。後ろを伺ったが、母さんの姿は見えなかった。
「葉瑠さんが熱を出したみたいでな。春市に電話があって、父さん達のところに電話が来たんだ」
「父さん、仕事休んだの?」
「有給があるからな。それに母さんが葉瑠さんが心配だってそっちに行ったから」
「そうなんだ…」
何で春市に電話なんて。
思わずムッと顔をしかめた。俺より春市を頼るのが気に入らない。
「着替え預かって来たから」
「ん、ありがと」
「花を頼まれてな」
「え?」
「何が欲しいって葉瑠さんに聞いたら、亮介の病室の花が枯れたから買って来て欲しいって。あの子は亮介の事ばかりだね」
「何で…」
「亮介?」
「何それ…」
春香の件と言い、花の件と言い、何でそんなに自分より俺の事を優先するんだ。
「大丈夫なの?葉瑠さんは」
「母さんが看病してるから大丈夫だよ」
不意に、聞こえるはずのない彼女の声がする。
「春香さんに連絡取れましたよ」
見舞いの品で貰った林檎の皮を包丁で綺麗に剥きながら、葉瑠さんが言う。
「来てくれるそうです。やっと会えますね」
笑ってそう言ってくれたが、目元はうっすらと潤んでいて、その笑顔もどこか硬い。俺自身も何でか素直に頷けない。
林檎は可愛らしくウサギみたいに切られていた。半月型。耳は林檎の真っ赤な色。
皿をテーブルに置く。
その時、気づくべきだったかもしれない。葉瑠さんが少し青白い顔をしていたのを。
(体調。ずっと悪かったのかも)
心なしか、痩せた気もする。でも元々華奢なので、気のせいかもしれない。
「亮介、大丈夫か?」
「ねぇ父さん。外出許可、おりないかな」
「外出許可?何でまた」
「葉瑠さんに伝える事があって」
「伝言なら父さんが伝えるから」
「直接言わなきゃダメなんだ!」
もう遅いかもしれない。でも、言わなきゃ伝わらない。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時