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家の前に行くと、ピンクの髪の少年がいて驚いた。一瞬、亮介さんかと思ったが違う。春市君だった。
「葉瑠さん!」
慌てた様子で春市君は私の名前を呼ぶ。キョトンとしていると、春市君は私に問いかけた。
「昨日のこの前も居なかったから心配したんだよ」
「そんなに私が常識知らずだから心配?」
「違うよ。兄貴の見舞いに行っても会わないから心配で」
「朝行ってるの。ずっと居るのも、迷惑でしょ?亮介さんからすれば、私なんて他人なんだし…」
「そんな自虐的な事言わないでよ」
「ごめん、春市君。お茶出してあげたいけど、私もう行かなきゃ」
「え、どこに?」
「仕事。パート始めたの」
「え、何で?兄貴入院してるのに」
「入院してるから。保険に入ってたのかも分からないし、生活費も入院費もかかるから稼がないと…」
「何でこの大変な時期に…。親には?こんな時くらい、頼ったら?」
「ダメだよ。大人なんだから、何とかしなきゃ」
「何でそんなに頑張るの?」
「亮介さんには常識知らずだって言われたから。こんな時に何も出来ないなんて思われたくないからかな?」
「僕はこんな時くらい、人に頼るべきだと思う」
「でも頑張りたいの」
それ以上、春市君は何も言わなかった。ただ私の手を痛いほど握り締める。
「僕、暫くは都内に居るから」
「うん。分かった」
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恋とは一体どんな感情なのだろう。
私が亮介さんとの間に築き上げたものはきっと愛で。
お互いで砂浜の砂を掻き集めるようにして、その愛を築き上げたんだと思う。
じゃあ恋は?
亮介さんは私じゃない人を思っているのだから、きっとこの気持ちは恋になる。
恋に見返りを求めてはいけない。
頭では分かっている。
でも彼の視線の先に別の女性がいるのは辛い事で。
慣れない立ち仕事のせいで脚が痛かった。歩くのもやっと。こんなにも働くのは辛いのか。そう痛感させられる。
帰路の足取りが重い。また明日も怒られると思うと、気が気でない。
「ニャー」
足下で猫の鳴き声がした。見やると、猫がいて私を見上げていた。
「貴方も捨てられたの?」
応えるようにニャーっと鳴く。
「煮干しならうちにあるけど」
しゃがんで、撫でようと手を伸ばした。その瞬間、猫が私の手を引っ掻く。
ズキンと傷口も心も痛んだ。猫は威嚇するようにシャーっと鳴いて私の前から逃げていく。
そっと零れた涙を拭った。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時