chapter06.お風呂 ページ26
鳴
今の俺の状態を表すならそう、『カポ〜ン』
つまり俺は先に身体を流し湯船に浸かっている。そして扉の磨りガラス越しに見える人影。間違いなくあれはA。
ぼんやりとした形でしか見えないのは残念だけど、まあ生で見えるしいっか。
「入るよ」
「どうぞ」
平静を装い応える俺。扉が開き入ってきたAの姿は身体にタオルを巻いていた。髪も邪魔にならないようにか、アップにしていた。
(スタイルもいいよな)
「D」
「え?」
「なんでもない」
プイッと顔を背ける俺。多分カップはそれくらいだと思うんだけど。
シャワーに手を伸ばす姿が視界に入り横目で伺う。と、ハラリとバスタオルがはだける。俺は女みたいに「きゃー」と叫びながら目を塞ぐ。
「どうしたの?」
冷静なAの声。塞いだ手の指をほんの少し開いて見る。と、水着姿のAがこっちを見ていた。まさかのバスタオルの下にチューブトップビキニ。
「なんで?」
思わず叫ぶ俺。
「何が?」
冷静に聞き返すA。
「お風呂と言えば裸の付き合いじゃん」
「えっと…」
困ったように眉尻を下げ、口元に拳をあてる。
その仕草は何だか新鮮で俺はジッとAを見つめてやる。
「流石に裸は、恥ずかしい…」
赤く染まった頬、潤んだ頬、ふっと見せる流し目。
恥ずかしがり慌てるAを見たいと言う思いからいつの間にかAの柔肌を見たいと言うよこしまな思いに変わっていたけれど、当初の目的を果たした途端すっと腑に落ちた。というか恥ずかしがられた事が嬉しくて頬が綻んだ。
「A、可愛い」
ニッと笑ってそう言ってやると、Aは恥ずかしそうに顔を手で覆う。
「鳴の方が可愛い」
「俺は格好いいの」
「そうかな?」
「そうだよ!ほら、早く一緒に入ろうよ」
バシャバシャと風呂の湯を叩く。Aは頷くとシャワーで汗を流し湯船に浸かった。
向かい合い俺を見て「ふふ」と笑う。
「何?」
「プールに入ってるみたい」
「俺はタオル1枚」
「嫌だった?」
「ううん。良かった」
「良かった?」
湯船に入ってこんなに距離が縮まるなら、水着で良かった。結果的に。
「ふ〜」
息を吐きながら手でお湯をすくって、首や肩にお湯を掛けるA。濡れた首筋がセクシーで思わずその妖艶な姿に見惚れてしまっていた。
「背中流そうか?」
Aの言葉に素直に頷く。
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月19日 17時