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鳴
「内助の功、内助の功」
と呟く俺の隣でAはさっき話かけてきた酔っ払いのオジサンを目で追った。
何か気に掛かる事でもあったのか。
つられて俺もオジサンを目で追う。
「あのオジサン、知り合い?」
Aに聞かれ首を傾ける。
「なんで?」
「急に話かけてきたから」
「知らない人」
「鳴ってコミュニケーション能力に長けてるよね」
「でしょー?都のプリンスだからね」
ニシシと笑みを浮かべると、人形のような綺麗な顔をコテンと傾ける。
「関係ある?」
「もう、A本当に真面目過ぎ」
家までは手を繋いで帰った。さっきまで星が煌めいいていた空にどんよりした雲が浮かんでいるのを見て、足を速める。
帰ったらこの前作ったバニラアイス食べよう。なんて話していると家に着く。
鍵で扉を開け、アパートの部屋の中へ。
靴を脱ぎ、部屋に脚を踏み入れるとAに手を引かれた。
「鳴、待って」
「え、何?」
「脱いで」
「え?」
「服脱いで」
え、ここで?
思わず立ち尽くす俺。Aの顔の表情は相変わらず変わる事がなく、日本人形のような顔が俺を見つめる。
「脱衣所でもいいけど…」
「だ、脱衣所!?」
「え、何か変?」
「否、だって普通、ベッドで脱がないの?」
「え?」
「え?」
てか、普通雰囲気あるよね?キスして延長戦でみたいな。
脱いでって、しかも女子からお誘いって俺男としてどうよ…。
「分かった。俺が脱がす」
Aに手を伸ばすとさっと胸の前に腕をクロスする。流石に表情が変化し、眉尻を下げている。
「自分で脱げる。それとも」
「?」
「脱がして欲しいの?」
不意にAから放たれる色気。ビリビリと電気のような快感が身体中を駆け抜ける。
心臓がバクバクと跳ねた。顔の熱も上昇し、熱くなる。
「んな訳ないし!脱げる!」
「早く脱がないと他の服に焼き肉の匂いついちゃう」
え、そっち?
勘違いしていた事に気づき、耳まで真っ赤になる。
更に感じる敗北感。振り回されてばかりの俺。ここで素直に言う事を聞けば、主導権は完全にAに回る。
俺は靴を脱ぐAの手を掴んだ。
「脱いでそのまま服着たら洗濯物増えるし、一緒に風呂入ろうよ」
どうだ。流石のAも慌てるだろう。
そう思ったが、Aの仮面のような顔は崩れないうえに赤くなりもしない。俺をジッと見て首を縦に一つ振った。
「湯船のお湯、少なくて済む」
そういう問題じゃなくない?
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月19日 17時