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鳴
数日後、互いのスケジュールを照らし合わせ、三人の予定が合う日に会うことになった。それが今日。
大学近くの喫茶店を待ち合わせ場所として指定された。テラス席カウンター席合わせて二〇席ほど。見渡しても姉の姿は見えず、テーブル席に腰かけた。
喫茶店は大学に近いことと、Wi-Fiが飛んでいるので大学生が多かった。スマホ片手にお喋りに講じる女子学生や、教科書を開きタブレットを活用しながら勉強する男子学生の姿。
それを一通り眺めたところで、お冷やとおしぼりが運ばれ「ご注文、お決まりですか?」と問われる。
「メロンソーダ」
姉を待っている間、俺は少し落ち着きがなかった。というのも、いくら家事全般をやってくれるからと言って狭い部屋で男と共に過ごすのはどうなのかと考え直したからだ。
いくら楽でも、俺にだってプライドがあった。
ふと、窓の外を見た。テラス席では女性が楽しそうに話しながら、ナイフとフォークを使ってパンケーキを食べている。
その向こうに人影が見えた時、俺は「あっ」と声をもらした。
あの天使の輪には見覚えがあったからだ。
名前も知らない、俺の思い人。
心臓が激しく鼓動する。俺と待ち合わせている訳でもないのに、彼女の姿が見えただけでスマホの画面を手鏡代わりにして身嗜みを整えた。
(姉貴の事、彼女とか間違われないよな?)
否、後輩の男も一緒に連れて来るのだ。大丈夫だと自分に言い聞かせる。そのタイミングで扉のベルがカランコロンと鳴り、来客を告げた。
(彼女か?)
期待で顔を上げる。だが入ってきたのは姉だった。
(通り過ぎただけか)
さて俺の世話する奴はどいつか確かめるべく、姉の後ろからやって来る人を確認する。内開きの扉が閉まり姿を現したのは、艶やかな黒髪の彼女だった。
姉はキョロキョロと店内を見渡し、俺を見つける。そして俺に近寄って来ると、後ろに居た彼女を差し紹介しだす。
「高校の後輩の三浦A。美人で料理上手で、嫁に欲しいタイプ」
まさかの女子。まさかの俺の好きな人。
文句を言って良いのか、悪いのか。判断できず口をパクパクさせる。
すると無表情な三浦さんは姉貴の方を向き、「あの…」と恐る恐る声をかけた。
「どうしたの?A?」
「住まわせてくれるのは男の人なんですか?」
「そう!あれ?言ってなかった?私の弟だって」
「いえ、ただいい人見つけたとだけ」
「ま、良いじゃん」
はぁっと溜息を吐いて三浦さんは俺を見た。
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月19日 17時