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鳴
「Aが可愛すぎてつらい」
「何だよ、その少女漫画のタイトルパクった科白」
野球の練習が終わり、一也と二人大学の食堂で暇潰し。そして昨日の事を聞かれ発した科白がそれだ。
出会って二日足らずで恋人関係になった事には一也も驚いていたが、良いんじゃねえ？とケラケラ笑っていた。
「で、その三浦Aちゃんってどんな子？」
「家事全般出来る完璧美女！」
「鳴は家事力と顔で選んだのかよ」
「違うし！一目惚れ〜」
へへっと笑うと一也にお熱いことで、と軽く流される。
一也はスコアブックに視線を落とし、俺は食堂の壁に掛けられた時計を見た。もう講義が終わる時間。あと三分もすれば講義を終えた学生で溢れ出す。
「鳴はさ」
「ん？」
一也の言葉に視線を戻す。
「最後までしなかったのかよ」
「し、してないし！」
あ、くそ。ここで慌てる感じ童貞っぽい。
「紳士なんだな」
「何か一也に言われるとスッゴい腹立つ。からかってんの？」
「はっは、別に」
乾いた笑い声をあげる一也を睨み、席を立つ。学生達で溢れる前にとっとと出ようと思ったからだ。
特に何か言ったわけでもないのに一也も起ち上がる。きっと俺と同じ考えなのだろう。
昼間には人が少なくなる図書室に行くと、窓際にAの姿を発見した。
椅子に座る仕草、本を読む仕草、どれを一つ取っても絵になる。
「俺の彼女発見！」
足取り軽くAの元へ。そして声をかける事なく、真正面に座る。一也は俺の隣に座りながら「声かけねぇの？」と問いかける。
「シッ！」
黙ってAの事眺めていたいんだよ。
「あ、鳴」
だがすぐ気づかれてしまった。Aが本から顔をあげ、俺を見る。サラサラした髪を耳にかけ、微笑む瞬間を捉え胸が警鐘を鳴らす。
「お友達？」
「初めまして。鳴の友達の御幸一也です」
差し出された手をAは遠慮がちに握る。
「あ、えっと、三浦Aです」
「俺の彼女♡」
念のために一也に言ってやる。
「マジで美女捕まえたんだな」
「当たり前じゃん」
「もうA、見つかんないよぉ」
そう弱音を吐きながらやって来たのは悠来ちゃん。俺を見て「Aの彼氏だ」とニヤニヤしながら言われる。そして一也を見てハッと息を飲んだ。
「この方は成宮君の友達？」
明らかに変わった声色と胸を張った姿勢を見て、一也に惚れたな？と直感する。
「御幸一也君。鳴の友達」
「ヤダ、A。もう成宮君を鳴って呼んでるの？熱〜い。お邪魔みたいだし、昼食一緒にどうですか？」
そして二人は去って行った。
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作者名：豆腐戦士
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年11月19日 17時
