chapter04.翻弄 ページ19
鳴
チョコレートでコーティングされたケーキを見て、Aは身を乗り出した。
「どこで買ったの？」
と問われ、胸を張る。
「友達に手伝ってもらって作った」
本当は大半を一也が作ってくれたんだけど。俺はお湯湧かしてチョコレート溶かして卵とか材料混ぜただけ。
「写真、撮って良い？」
「うん」
Aはスマホを取り出し、ケーキを撮る。撮った画像を確認すると、嬉しそうに微笑んだ。
「嬉しい」
「だと思った！」
「鳴はエスパー？」
「なんで？」
「だと思ったって言ったから」
「A、嬉しそうに笑ってたから分かるよ」
どう反応して良いのか分からないのか、Aはこくんと首を縦に振る。そして立ち上がり、俺の隣に座るとフォークを俺に渡した。
「そのままつっついて、食べていい？」
「俺が食べさせてあげる」
フォークでケーキを刺し、Aの口まで運ぶ。Aは長い髪を左肩に流すと、あっと口を開け頬張る。露わになった首筋、真っ赤な唇についたチョコを指ですくう様、チロリと唇を舐める赤い舌。
(色っぽい…)
同い年とは思えない色気に胸が高鳴る。
「鳴？」
気づけばAの腕を握り顔を覗き込みキスをしていた。柔らかい唇の感触が伝わる。歯列をなぞり、腔内を侵すとケーキの甘ったるい味がした。
「んっ…」
暫く舌を絡ませると、息が出来なくなったのか胸を叩かれた。ハッと息を吸い唇を放す。新鮮な空気が肺に入り、銀糸が互いの唇を繋いでいた。
顔を真っ赤にしながらAを見やる俺に対し、Aは顔色ひとつ変えない。
「びっくりした」
「…嬉しくなかった？」
「もっと順を追ってして欲しかったけど」
「俺がチューしてその反応はないじゃん」
拗ねたように唇を尖らせると、Aは俺の首に腕を回し言った。
「さっきはびっくりして何も感じる暇がなかったから、もう一回して欲しい」
ヤバイ、何この色気。
翻弄されっぱなしだ。でも男として慌ててるのがバレるのが悔しくて、鼻先同士を触れ合わせた。
「俺の本気チュー、頭真っ白になっちゃうよ」
「いいよ」
唇を啄んだ。んっ、とAが声を零すのを聞いて唇を甘噛みする。
角度を変えキスをした。
そしてするりと舌を腔内に滑り込ませる。
「ふっ…」
Aの脇の下に腕を通し頭に手を添えると、そっと彼女を押し倒した。
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作者名：豆腐戦士
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年11月19日 17時
