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A
「あ…」
「三浦さ〜ん」
前方に成宮君が手を振る姿が目に入る。隣の悠来が辺りをキョロキョロと見渡して、最後に私を見ると指差した。
「三浦さんってまさかのAの事?」
「この場の他に三浦さんが居なかったら私だと思う」
周りの目が私に集められる。手を振り返せずにいると、成宮君がずんずん近付いて来て私の元にやって来た。
「無視しないでよ」
「ごめん、ちょっと驚いて」
隣で悠来が「そう見えなかったけど」と呟く。私の無表情は今に始まったことではないので仕方ない。
「Aが成宮君について調べてたのはそういう事」
悠来は少し面白くなさそうだった。目を半開きにして私を見やる。成宮君はと言うと真逆で少年の様に目をキラキラさせた。
「何?三浦さん、俺について調べてくれてたの?」
「うん。今朝偶々成宮君が野球してるの見て、女の子に囲まれてたから、1年生で同い年なのにもうあんなに人気って事は凄いのかと思って」
「聞いてくれればいいのに」
悠来がごほんと咳払いを一つして、存在感をアピールする。
「あ、彼女は友達の悠来」
「二人はどういう関係なの?」
悠来が眉根を寄せ、私と成宮君を交互に差しながら言う。
「えっと…」
どもる成宮君。私も暫し考えて、口を開く。ついて出た言葉は成宮先輩に言われた言葉だった。
「お、お世話係!」
「え?」
きょとんとした表情を悠来は浮かべる。
「お世話係なの。泊めてもらう条件みたいな」
声を落とし説明する。途端、悠来は目を見開きえっと声を荒げた。
「つまり二人はひとつ屋根のっむぐっ!」
慌てて悠来の口を塞ぐ。悠来はもがみがさせていたが「それ以上ダメ!」と言えばコクコクと首を縦に振った。
それを見て悠来の口から手を放す。
「三浦さんって仲良い友達居たんだ」
「成宮君、サラッと酷いこと言うのね」
私がそう言う横で悠来は頷く。
「でも成宮君の心配分かる。綺麗で無表情って近寄りがたい最強の組み合わせだし」
「でも三浦さんって良い子だよね」
ニイッと成宮君が笑った。悠来は「成宮君とはお友達になれそう」と言って、何故か私の背中を押す。体勢を崩すと、成宮君が私を受け止めようと腕を伸ばし庇ってくれた。
「じゃ、三限はAと違う講義だからまたね〜」
ヒラヒラ手を振り立ち去る悠来を見送って成宮君が言った。
「一緒に座る?」
聞かれて私は首を縦にひとつ振った。
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年11月19日 17時