震える声 ページ8
「ヴァネガットは何処に?」
「爆弾でも探してるんじゃないですか?」
「あるわけないのに…」
嘲笑うようにAは言った
「A」
ドストエフスキーがAに声を掛けた
「先刻の僕の質問に、まだ答えていませんよ」
「……ヴァネガットは、最初から彼奴の部下だった
それに気付いたのは、最近だけどね」
「……そうですか」
「一つ、聞いていいかい?」
唐突に鴎外がAに言った
「?」
「君は先刻、“実験体„ と云ったね…
実験…どういう意味だい?」
「…………」
「…………」
鴎外の言葉に、Aは目を伏せ、水無月は目を閉じた
沈黙
呼び起こされる記憶
「………… “実験„ 、は…」
Aは目を伏せたまま言った
微かに声が震えている
「…クッ……」
水無月はガスマスクの上から眼を手で覆い、天井を向いた
「 “実験„ というのは…八絃一也がポートマフィアに在籍していた頃から行ってた……
異能力を破壊し、人間という形を狂わせる………化物に等しい存在を造る実験」
「「「「「「!?」」」」」」
全員が目を見開いた
Aを “無名„ から救い出したドストエフスキーすら知らなかった事実
十六夜Aという人間が声を震わす程の事実
「成程…」
鴎外がそう呟くと
「おいおい…何種明かししてんだよ」
一人の男の声が響いた
「「!?」」
「「「「「「!!」」」」」」
Aと水無月は目を見開いて扉の方を見た
「『有り得ない』って顔だな、二人とも」
「八絃、さん……」
扉の前には、八絃とアルベール、ヴァネガットが居た
「何故、此処に…!?」
「ああ…
Aの言葉に、八絃はそう言った
「え…?」
「娘…?」
「彼奴が…?」
「八絃君の…?」
八絃の言葉に太宰達は困惑した
すると、冷気が部屋にたち込めた
「異能力『雪国』」
八絃がそう云うと、冷気はある一点に集中する
「…!?」
Aはそれに気付き、足元を見た
冷気が集中していたのは、Aの足元だった
見たときにはもう、遅かった
冷気はAの脚を凍らせ、動きを止めていた
「クッ…Aさん!」
水無月が近付こうとすると冷気が空中に漂う水蒸気を凍らせた
部屋の温度が一気に氷点下まで下がった
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作者名:朱鷺の砂 x他1人 | 作成日時:2019年8月1日 22時