56.最上級ノスマイル ページ20
一気にテンションだだ下がりで
玄関までお見送り。
分かりやすくテンションを下げてしまったから
靴べらで頭をペシッと叩かれた。
「形だけは上手く出来てた。」
「！！」
思いがけない優しいフォローに
胸が跳ね上がっちゃいました。
「お前の重ーい気持ちがこもってて。」
「……。」
自分で言って
ふは！って吹き出す。
完全に遊ばれてる…。
しかも楽しそうではありませんか！？
でもこっちは必死です。
「これからもっと頑張ります！
だから…」
「だから？」
「見捨てないで下さい…。」
必死になってみっともないとか
そんなこと言ってる場合じゃない。
必死でいいの。
余裕なんてないの。
これが私の気持ち。
それをそのまま櫻井さんに伝える。
変なことを言いだして
引いてないかな？と
櫻井さんの顔を伺うとそうでもない様子。
それどころか…
「しゃーない。
見捨てないでやるから
ケータイ番号、教えろよ。」
「え…あ…ハ、ハイ！！」
なんて番号交換を切り出された。
慌ててケータイを出すと取り上げられ
カタカタカタと素早い動きで登録をしてくれた。
「"櫻井翔"で登録したから。」
「あ！ありがとうございます！！
わーーー、櫻井さんの番号だぁ♡」
「…Aのも、ほら。」
あ…名前。
しまった。
櫻井さんは普通に私のことを
名前で呼んでくれてるのに！
櫻井さんのスマホは私と同じ
リンゴのマークが背面に付いてるやつ。
だから操作は難なく出来て…
登録名に少し恥ずかしくなる。
「"櫻井A"で登録していいですか？」
「旧姓とかおかしいだろ？
それでいんじゃね？」
登録してスマホを返すと
すぐに確認された。
「あの！電話番号ありがとうございました！」
「夫婦なんだから、
そんなことでお礼言うなよ。」
「いえ、宝物にします！！」
「お前、おっも！笑」
「重いですか！？
じゃあやめときます！！」
「バカ、それでいいんだよ。
んじゃ、いってくるわ。」
い、いいんですか…。
ガラガラ…と玄関の引き戸を開け
会社に向かう旦那様に
カバンと傘を差し出す。
「いってらっしゃい…翔さん！」
思い切って呼んでみた名前に
翔さんは今までで1番の笑顔をくれた。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2015年7月10日 22時
