29.苺のおパンツ ページ29
キィィィィィ…！
サトチと私を乗せたママチャリは
坂道でブレーキを掛けてるおばちゃんみたいな音を立てながら
私のアパートへと到着。
自転車でわずか10分程の距離で
まさかのご近所さんだった。
「ここがAんち？」
「うん。
あのおパンツが干してある二階の部屋。」
「ん〜？
あれか？
もうちょっと色気あるの履けよ〜。」
「よく言われる。
あ、見物料取るよ？」
「わ！やべぇ！！
見てない！苺のパンツなんて！」
「しっかり見てんじゃん！」
「うわー！！
払いたくねぇ！お金使いたくねぇ！！」
ぎゃあって手で目を覆う。
全力で拒否かね？
そうかね？
「ってのは冗談。
Aは女の子なんだから
パンツは隠して干しなよ。
あそこが女の子の部屋って言ってるようなもんだし。」
なんて突然真面目なことを言い出すんだから。
心配してくれてるのかな？
やっぱり優男。
「サトチくらいだよ、
こんな私を女の子扱いしてくれるの。
隣に住んでる鴨なんて
アジの干物くらいな扱いしてくるよ？」
「んはは。アジの干物。笑
でも自分も鴨扱いしてんじゃん。」
ま、確かに。
家まで送ってくれたサトチは
ふんふん笑ってから
自転車を元来た方向へ向けて
「じゃ、俺帰るわ。」
ってサクサクーと帰ろうとするから
思わず引き止める。
「あ、待って。
無事帰れたか連絡欲しいんだけど。
番号交換…とかダメ？」
スマホを取り出しフリフリ見せる。
「困った。
俺、ケータイとか持ってない。」
何となく
そんな気はしてたけど訊いてみただけ。
「そっかぁー。
じゃあ伝書鳩飛ばして？」
「んはは、残念。
今頃鳩は夢の中。
連絡しなくても月曜またすぐ会えるから大丈夫。」
「月曜…また工場来るの？」
「ん。
週明けから一大プロジェクトが立ち上がるからなー。
忙しくなる。
そしたらAに会える回数も増えるよ。」
「…それ、
チョコレート貰える回数が増えるって聞こえるけど？」
「んは！やべ逃げろ！」
吹き出したサトチは
自転車に跨り逃げるように走り出した。
その背中に向かって
「サトチー！
ありがとうー！
気をつけてねー！！」
って。
深夜1時過ぎ。
大きな声で叫ぶと
サトチはヒラヒラと手だけ振って角を曲がっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3848人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2016年2月24日 22時
