#83 ページ34
大好きな声が耳から入って鼓膜を震わす。
骨が音を増幅させて、脳に届く。
届いた音は言葉になって、キラキラ尖ってわたしを刺す。
「おれが守ってやんなきゃって」
俯いてふふって笑う。
「あいつはそんなのいらねーって思ってるかも。」
「…そんなわけないです。」
「ん？」
「困ったときに電話するのは、好きな人か、好きでいてくれる人です…。」
「……土曜の、よるの、電話」
「はい」
「あの日は、翔くんが出張で。」
「…。」
「自動車と接触事故ってきいて…」
「え！」
「あ、いや、へいきなんだけどね、おっちょこちょいなの」
微笑む大野さんから目を逸らす。
「ただちょっと、パニックになってたし、おれも驚いて…。」
「…そうですよね」
「ごめんね」
「いいんです。好きな人を最優先するのは、当然です。」
困ったように眉を下げて、
こっちむいてよ、って弱ったみたいな声。
「大学はいってから翔くんと知り合ってね、あいつ、翔くんのおかーさんのツテでピアノの先生してんの。プロは無理だけど…でも、すきなこと、してる。」
「…。」
「やりたいことやって楽しい、って笑ってるかお見るとホッとする。」
「…。」
「翔くんのおかげなの。…あんね、おれ、ぜったい一生あいつのことほっとけないし、呼ばれたら何より優先しちゃうの。」
「…はい、…わかりました。」
「まってよ、あのね？でももう、恋じゃないよ。クセみたいなもんで。あいつには翔くんがいるし。大切なことには変わりないけど、これは、恋じゃ、ないよ」
大野さんが、真剣な目をしてる。
「勘違い、とけないかな？」
「大野さん、」
「おやごころ、みたいなもんで」
「…うん、はい。でも、お店で彼女さんを見て、戸惑ってた。」
「…戸惑ってたのは、高橋さんでしょ。高橋さんが、おれとあいつと、翔くん、見て、急に固まって、真っ白になってこまった顔するし、」
大野さんが言葉を切ってチラリとわたしを見る。
いまは？だいじょーぶ？って確認するみたいな。
「…翔くんに、おれと付き合ってるっていわねーし。おれといるとこ見られたくねんだなって、おもって」
「わたしは…大野さんが、わたしといるところ見られたくないんだろうなって、思いました。」
「なんで…」
「声、」
「こえ？」
「あの人の声、智って、」
「声でわかった？」
「はい。電話の人だなって。」
「おれの好きなひとだ、って？」
「…はい。」
「ちがうよ」
「…。」
「ちがう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 175人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kei(プロフ) - 初めまして。また読み直してしまいました。何度も読んでます。大野さんが素敵すぎて胸が痛いです。他のお話も全部読みました。また楽しみにしてます！ (2015年8月31日 18時) (
レス) id: de1ba3d8b7 (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - かなさん» わざわざ確認してくださったのにお断りしたみたいになってすみませんでした。今後もし同様に気に入って頂ける作品ができた際も報告は必要ありませんのでご自由にして頂いて結構です。素人の書いた小説なのに大切に思ってくださって嬉しく思っています。 (2015年3月11日 7時) (レス) id: b9560616a0 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 本当ですか(>_<)ありがとうございます！まさか良いと言ってもらえるなんて思わなかったのでめっちゃ嬉しいです。私自身アナログ派なのでノートで読みたいんです…勝手に書くのは気分的に嫌だったので一か八か聞いてみました。本当にありがとうございます(>_<) (2015年3月11日 1時) (レス) id: 06ac3ed6b2 (このIDを非表示/違反報告)
奈緒(プロフ) - かなさん» わー！かなさん！すみません、言葉足らずでした！個人でお楽しみいただくぶんには私の管理の範疇を超えている、と考えていますのでご自由にどうぞ、というつもりでした。私こそ不快な思いをさせてしまい申し訳ないです…。念の為改めて、ご自由になさってください。 (2015年3月11日 0時) (レス) id: b9560616a0 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 余計きゅんってなります(^^)文章をまとめる能力が欠けているもので長々とたくさんコメントしてしまいごめんなさい…でも本当に1番大好きな作品です。二宮くんメイン？の作品も続き楽しみにしてます！更新ゆっくり頑張ってください！！ (2015年3月11日 0時) (レス) id: 06ac3ed6b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奈緒
| 作成日時：2015年1月17日 10時
