スターダスト・ノスタルジア 【N.R】

☆36 ページ36

「これだよー、本で見たの」

「すげー……まじすげ……」

「曲線どうやってかいてるんだろう」

「ここも細かい」



2人して、絵の前で何か議論してる。
全然わかんない。

その後ろで、私は立ってるだけ。


………ほんと、なにしに来たんだろ。

ため息ついて、ふと後ろをみたら、
遠くの方に飾ってある風景画が目に入る。




ふらふらと近寄っていくと、
ああ、これは湖の絵だとわかった。



大きな湖が真ん中に大きく描かれてて、
それが鏡のように、周りの風景が木や鳥を映してて。
雨の後？葉っぱに溜まってる雫がみずみずしい。



他の絵は、個性的、独創的なものばかりなのに

この一枚だけは、どこにでもありそうな、
ありふれた絵。

なのに、なぜかすごく、心惹かれた。







「この絵、気に入ったの？」




びっくりした。

絵に、集中してたから。
急に話しかけられて、体が飛び跳ねる。




「ああ、はい。なんか、好きです」

「なんでこれなん？他の絵は？」

「わーからへんけど、、なんか、これがええなっ、て。」

「どんなとこが？」

「……んー…どうでもよさそうな、絵なところ？」

「………どうでも、いい？」

「なんて言ったらいいんやろ…えっと……どうでもいい風景なのに、こんなに凝って描いてはるから…ほら、ここの蟻みたいなんとか、あはは、これ蟻かなあ」

「……」

「どうでもいい風景を、こんなに凝って、時間かけて描いてるってことは、…これ描いた人、この場所大好きなんだろうなあって」



そこで初めて、
私はその話しかけて来た人を見た。

学生？私と同じくらいの歳っぽい。
整った顔の、男の子だった。




「あ…なんか、すいません。私、絵とか美術とかよくわからへんのですけど……」

「へ？絵、描いてる人じゃないの？」

「描いてる人じゃないですー」

「へえ。ふうん、、、……はは、そっか」


くくっ、て何か、おかしそうにその男の子が笑う。

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