其ノ漆拾陸 ページ33
Noside
Aが涙香とお茶会をしていたその時……
樋口は、黒蜥蜴の協力を得て、芥川の奪還に成功していた。
その帰り道。
「先輩、体調の方は大丈夫ですか?」
「嗚呼。大した事は無い。」
「なら良かったです。
そう云えば、これ。先輩の物ですか?」
樋口は、懐から携帯を取り出した。
芥川は、身体に負担をかけないよう、ゆっくりと受け取る。
「……僕の物では無い。」
「そうなんですか。では、それは──」
「これはAの物だ。」
「っ!……Aさんの?」
「嗚呼、間違い無い。……これをどこで拾った?」
「海で芥川先輩を見付けた時に、先輩の傍で沈みかけていたんです。」
「……そうか。」
芥川は、携帯を暫く眺めた。
「これは貴様がAに返せ、樋口。」
芥川は、樋口に携帯を押し付けるように返す。
「えっ、私が?……はい、判りました。」
樋口は、携帯を懐に戻した。
樋口side
先輩を医療室に寝かせた私は、Aさんを探しに出た。
携帯は重たく、直ぐ沈む……
その携帯が、沈まずに芥川先輩の横にあったと云う事は、Aさんは、私が来る直前まで先輩の傍に居たと云うことになる。
取り敢えず、一度話を──
「何かあったのか、樋口?」
「涙香さん……何でこんな時間に?」
「芥川が拐われたと連絡があってな。
ただ、Aが動かなかったから、俺も動かなかったんだ。」
「何でAさんは、動かなかったんですか?」
「樋口の為、と云っていたぞ。」
「私の?」
「嗚呼。
こうでもしないと樋口が皆から認めてもらえない
……と、云っていた。
だから、樋口の為に今回は身を引く、ともな。」
私が皆から認めてもらえない?
……黒蜥蜴の事か。
確かに今回の一件で、私に対する黒蜥蜴の態度は変わった。
真逆、Aさんはその為に?
「ただその後……
優しい人間は、あの時、自分に構わず彼を助ける。
Aには、それが出来なかった。
……と云っていた。
俺には、意味が判らなかったが、何か後悔している様だったぞ。」
彼……芥川先輩の事か?
自分に構わず……
「涙香さん、有難う御座いました。
私は、Aさんと話して来ます。」
「?……感謝されるような事は何もしていない。
Aと話したいなら、執務室に行くと良い。
まだ居る筈だ。」
「そうですか……有難う御座います。それでは。」
「嗚呼、またな。」
私は、Aさんの執務室へ急いだ。
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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時