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其ノ肆拾玖 ページ6

Aside

「成程……」

そう小さく零して、姐さんは短い溜息をついた。

「私は、何を云っても無駄なんじゃな。」

「ふふっ……やっと判って下さいましたか。」

姐さんは、漸く笑みを崩し、悔しそうに顔を歪める。

「既に作戦は実行に移されておる。
それに、Aは私の上司……
私の反対ごときで、この作戦は無くならぬ。
つまり、私は無力同然。」

「そういうことです。
元々、今日の目的は彼の紹介だったので……
ここらでお(いとま)させて頂きますね。
涙くん、行くよ。」

「あ、嗚呼。」

涙くんは、飲みかけの紅茶を一気に流し込み、立ち上がる。

「まぁ、見てて下さいよ……姐さん。
鏡花ちゃんも最後には笑ってる筈なので。
それでは、また。」

「紅茶、美味しかったです。では、失礼致します。」

姐さんの視線を背中で感じながら、私達は部屋を出た。

「……とても緊張した。」

唐突な涙くんの言葉に、私は少しばかり驚いた。

「してたんだ?意外。まぁ、姐さん綺麗な人だしねぇ。」

私の言葉に、涙くんは小さく頸を横に振った。

「いや、そういうことではない。」

「違うんだ?じゃあ、何で?」

「泉鏡花の名をAが口にした瞬間、空気が冷えたのを感じた。」

……気付いてはいたんだ。

「その後は、その空気に緊張していた。
お陰で、角砂糖を一つ入れ忘れてしまった。
ついでに、ミルクも入れすぎた。」

なんか、涙くんらしいなぁ。

「それは悪いことをしたね。」

頭を撫でながらそう云うと、

「Aが謝ることではない。」

涙くんは、驚いたように顔を上げた。

「そうなの?」

「嗚呼。」

……本当に、私は愛されてるみたいだねぇ。

その後、私達は、梶井の実験室に向かった。

「他の幹部は、諸々の事情があって居なくてね。」

「そうなのか。」

「そうそう。意外と忙しいんだよねぇ。
私は、驚く程暇だって云うのに。
……まぁ本音を云えば、私が会いたくないだけなんだけど。」

「そうか……なら、俺も会いたくない。」

「うんうん、いい返事。」

あ、そうだ。

「行く前に、幾つか注意事項ね。
先ず、彼奴から物を受け取らないこと。
絶対、ろくなもんじゃないから。
次に、彼奴の半径五(メートル)以内に近付かないこと。
何されるか判んないから。
助けてあげられそうなら、助けてあげるけど。」

なんて話をしているうちに、梶井の実験室に着いてしまった。

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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時

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