其ノ捌拾壱 ページ38
Noside
「この怪我は、僕の弱さが招いた結果だ。
寧ろ、Aには感謝している。
手を出さなかった事も、僕の元に居てくれた事も。」
「っ！何で……」
「樋口に、貴様の携帯が僕の傍らに沈みかけていたと聞いた。」
「…………」
「その後、戻って来て診断書を確認した。
貴様が謝罪をする理由がどこにある？」
「だって……」
「…………」
Aは、ばつが悪そうに俯いた。
「狡いよ、龍くんは。謝らせてもくれないなんて……」
「何時に無く弱気だな。」
「……どうしても、罪悪感があって。
それと、龍くんが目の前に居る事にほっとしてるのかも。」
「らしくない。」
「判ってるって。」
俯いたまま顔を上げないAを見て、芥川は溜息をついて横になった。
「取り敢えず、今日は戻って休め。僕も寝る。」
「うん……ごめんね、起こしちゃって。」
「気にしてない。」
「…………有難う。」
芥川にも聞こえないような小さな声でそう呟いたAは、静かにその場を去って行った。
「それで？頼みって何だよ？」
自身の執務室のソファーにどかっと腰を降ろし、中也が尋ねた。
「俺に、体術を教えてほしいんだ。」
中也の向かいに腰を降ろしながら、涙香が云った。
「……本気か？」
「嗚呼。」
中也は涙香を鋭く睨み付けるが、涙香がその目を逸らす事はない。
「そもそも、手前は……」
「…………」
「……涙香は、何で体術を習いてェんだよ？」
涙香は、少し悲しげに目を伏せた。
「俺は、Aと違って弱い。
所持する異能力も戦闘系では無いし、ナイフや銃は一通り扱えるが……余り使いたく無い。
つまり、俺の戦闘力は零に等しいんだ。
このままでは、Aの足でまといになる。」
「何でナイフや銃を使いたくねェんだよ？」
「俺は、Aに人を殺す事を禁じられている。
ナイフや銃では、人を殺してしまう可能性があるからな。」
「……で？」
「体術ならば、人を殺す心配も無いし、護身が出来れば取り敢えず足でまといになる事は無い。
役に立つ可能性だってある。」
中也は、元々鋭かった目を更に鋭くした。
「彼奴の実力なら、涙香なんて足でまといにすりゃならねェよ。
付け焼き刃程度の体術なんてもっと意味──」
「判っている。それでも、俺は強くなりたい。
……強くならなくちゃいけないんだ。」
涙香を鋭く睨み付ける中也と、その目を真っ直ぐ見詰め続ける涙香。
二人の間に暫くの沈黙が生まれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います！そう云って頂けると私も頑張れます！これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (
レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です！！ ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います！楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです！忙しいと思いますが更新頑張ってください！続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います！更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：舞花 ひめ | 作成日時：2019年6月1日 8時
