其ノ捌拾 ページ37
Noside
芥川は、夢を見ていた。
ポートマフィアに入る前の……幼い頃の夢だ。
一人の少女と、薄暗い貧民街で話をしている。
少女は、肩に付かない程度の綺麗な髪を持ち、その顔立ちはまだ幼いものの、この世とは隔離されているかのような美しさを誇っていた。
地味な無地の黒パーカーを着ており、それが余計に少女の容姿を引き立てている。
そんな少女の話は、どれも芥川の興味をひくようなものばかりだった。
夢の中で少女と会話していた時、遠くの方で誰かに呼ばれる。
その声は、目の前で話す少女の声にどこか似ているような気がした。
「……そろそろ、時間みたいだね。」
記憶に無い少女の台詞に、芥川は目を見開いた。
「待て。何処へ行く?」
「大丈夫。私は、何時でも傍に居るから。」
少女の姿が光に包まれ、消えて行く。
「……待て。待て!──!」
「!」
夢で少女の名を叫んだその時、芥川は目を覚ました。
芥川は、身体を起こすことも忘れて少女について思案した。
今の今まで、少女について忘れていた。
だが、頭の片隅にずっと居たような気もする。
貧民街で共に過ごした仲間とも違う、謎の少女。
何故だかは判らないが、芥川はその少女に再び会いたいと強く感じた。
その少女の名前は──
ふと、近くに誰かの気配を感じた。
ゆっくりと身体を起こす。
「……起きたんだ。」
「A……」
ベッドの横にある椅子で、Aがお茶を啜っていた。
「穏やかじゃ無かったみたいだけど……
何か悪い夢でも見てたの?」
芥川はその時、初めて自分が汗をかいている事に気付いた。
「……昔の夢だ。」
「貧民街に居た時の?」
「嗚呼。」
「それは、災難だったね。」
芥川の分のお茶を淹れながら、Aが云った。
「いや、あの地獄のような時の記憶では無い。
貧民街の仲間では無い、誰かと話している夢だ。」
「へぇ……誰だかは判るの?」
芥川は、静かに首を横に振る。
「思い出せぬのだ。」
「そう……」
「それで、A。何故貴様は此処に居る?」
Aからお茶を受け取りながら、芥川はが問うた。
自分の分のお茶を淹れる手を止め、Aは、真っ直ぐ芥川を見詰める。
「……謝りに来たの。
その……怪我についてなんだけど──」
「この怪我についてなら、何も謝る必要は無い。」
「……えっ?」
予想外の芥川の言葉に、Aは目を見開いた。
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舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時