其ノ肆 ページ5
Noside
次の日。
作戦を聞いた樋口は、探偵社に潜入していた。
「えーと、調査の御依頼だとか。
それで──」
「美しい……」
向かいの席に座る男は『谷崎潤一郎−細雪−』
彼の言葉を遮り、樋口の手を取り、口説き始める男は『太宰治−人間失格−』
「睡蓮の花のごとき果敢なく、そして可憐なお嬢さんだ。どうか私と、心中していただけ──」
そんな太宰をガン、と殴り飛ばす男は『国木田独歩−独歩吟客−』
「……えっ?」
「あ、済みません。忘れて下さい。」
そう云って、太宰を隣室に引っ張っていき、扉が閉まる。
「それで、依頼と云うのはですね……」
樋口は、自身の任務を思い出し、言葉を紡ぐ。
「あ……はい……」
「(普通に再開した……
変人慣れしてンのかな?)」
それを知らない探偵社員は、驚き半分、感心半分……と云った感じだ。
「実は我が社のビルヂングの裏手に、最近善からぬ輩が屯している様なんです。」
それに構わず、樋口は言葉を続ける。
「善からぬ輩ッていうと?」
「分かりません。
ですが、襤褸をまとって日陰を歩き、聞き慣れない異国語を話す者もいるとか……」
「そいつは、密輸業者の類だろう。」
国木田が隣室から出てくる。
「軍警がいくら取り締まっても、船蟲のように湧いてくる。港湾都市の宿業だな。」
「ええ。無法の輩だとという証拠さえあれば、軍警に掛け合えます。ですから──」
「現場を張って証拠を掴め、か……小僧。」
国木田は横目に少年を見る。
此の少年が今回の目的……『中島敦−月下獣−』
樋口は、内心細く笑った。
「お前が行け。」
「へッ!?」
「ただ見張るだけだ。
それに密輸業者は無法者だが、大抵は逃げ足だけが取り柄の無害な連中だ。初仕事には丁度良い。」
「でっ、でも……」
「谷崎、一緒に行ってやれ。」
不安そうな敦を見て、谷崎にも指示を出す。
すると、
「兄様が行くなら、ナオミも随いて行きますわぁ!」
谷崎の妹『谷崎ナオミ』が名乗りをあげる。
こうして、樋口は三人の探偵社員を、作戦の場まで連れて行くことになったのだ。
初仕事に緊張しながら、出かける用意をする敦。
「おい小僧。」
其の敦に国木田が話しかける。
「不運かつ不幸なお前の短い人生に些かの同情がないでもない。故に、この街で生きるコツを一つだけ教えてやる。」
国木田は、手帳に挟んであった一枚の写真を取り出し、敦に見せた。
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舞花 ひめ(プロフ) - 櫻色華伝さん» コメント有難う御座います!涙香くん、可愛いですよね!私もデレデレしながら書いてます(( これからも頑張って更新させて頂くので、これからも宜しくお願い致します。 (2020年1月8日 10時) (レス) id: 56c3681e86 (このIDを非表示/違反報告)
櫻色華伝(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!夢主(私は累-かさね-ちゃんとしてます)LOVEの涙香くん可愛すぎる!応援してます。更新頑張ってください! (2020年1月7日 15時) (レス) id: bb11e6ace8 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!頑張って更新させて頂くので、楽しんで頂ければ幸いです!▼とあるヰ琉兎さんも、頑張って下さい!応援してます! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 95f7a369ce (このIDを非表示/違反報告)
▼とあるヰ琉兎(プロフ) - 首領の意味深な発言や芥川との関係が良かったです!!この先どう進んでいくか気になります。更新楽しみにしてます!!これからも、応援してます(´ω`*) (2019年4月3日 21時) (レス) id: ff0f774975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年3月1日 7時