【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ42)

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「康一くんを思うだけで幸せよ。でも、好きでたまらない気持ちが溢れてしまいそうになったら、一体どうしたらいいのかしら」
「そのときになったら、何か状況も変わってるんじゃないかな」
「……そうね。あと3年、彼と同じ学校にいられるんですものね」

窓の外に視線を移すと、体操服姿の生徒が少しずつ集まってきている。

由花子が見ているということは、と目を懲らせば、リーゼントと低身長の男子二人組が見つかった。きっと由花子は初めから彼がどこにいるか分かっていたに違いない。

微かなため息をついた彼女は、チャイムまでここに居座るつもりのようだ。
一人の世界を邪魔しないようにそっと離れる。

教科書やノートを準備する生徒が増えている中、Aは自分の席に戻る前に億泰のところへ立ち寄った。

「ねえ億泰くん」
「おう？」
「由花子さん、最近ちょっと変じゃあない？」

億泰はぐるりと上半身を回して由花子を探し、そしてまたAへ向き直る。

「由花子は初めっからちょっとどころじゃなくぶっ飛んでるぜ」
「うーん…」

上手い反論の言葉が出て来ないまま、チャイムが休憩時間の終わりを告げた。

◇◇◇

放課後の通学路は帰路から外れる生徒も一定数存在する。
いつもはまっすぐ家に帰るAも、今日は町へ散らばる学生に混じって寄り道をした。
目的地は本屋だ。

以前からお世話になっている参考書や一般図書のコーナーは素通りし、とりわけカラフルな棚の前で立ち止まる。出版社別で探すまでもなく、そのシリーズはすぐに見つかった。

『ピンクダークの少年』というタイトルの下に、『岸辺露伴』と作者の名前が躍っている。

彼に会ったことは、仗助が昼休みに「あのイカレ漫画家がよォ」と愚痴ったことでいつもの面子にも伝わっている。
補足する形でAも話したら、康一が「参っちゃうよね」とひどく同情してくれた。しかし苦笑いする彼が言うことには、それでも岸辺露伴の漫画は面白いのだという。

康一が言うのなら、と本屋で漫画本を買ってみたのが先日のこと。

勝手が分からず、目立つ位置に平積みされていたものを買ったら、帰ってからそれがシリーズ物の最新巻だと気付いた。
どんなものか知りたかっただけなので、別段失敗とは思わなかった。…思わなかった、のだが。