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晴れたある休日のこと、仗助は少し憂鬱だった。
用事を済ませてさっさと帰りたかったのに、帰路の途中にある公園で何かイベントをやっているらしく、いつにも増して賑やかだったのだ。
子供連れの多い人混みを突っ切るのはなんだか気が引けて、仕方なく回り道することにした。
表通りとは打って変わって静かな並木道に、遠回りでもこっちにきてよかったと思っていたら、行く手に見知った背中を見つけた。
厳密には、見知ったスタンドの背中を。
(あれ。Aじゃあねーか)
家が近所なので鉢合わせてもそう驚きはしない。
地べたに座り込んでいるのも、スタンドが出ているのも、また彼女のうっかりかと、仗助は声をかけようとした。
またスタンド出てんぞー、とあくまで和ませる程で。
しかし名前を呼ぼうと口を開きかけたところで、仗助はぴたりと足を止めた。
彼女の向かいに、誰かいる。
横に流した髪をヘアバンドで上げているその男に見覚えがあると気付いた瞬間、ぐらりと腹が煮える感覚を覚えた。
伸びやかな声を出そうとしていた喉から出たのは、一転して低く相手を射抜くような声だった。
「あれェ〜?誰かと思えば、漫画家先生がこんなところで何やってんスかぁ?」
「東方くん…!」
振り返った彼女に本になった様子がなく安堵する。
レイヴィング・ナイトの爪がまた首に刺さっているのが気になるが、今は露伴をどうにかするのが先だ。
漫画のネタ探しのためなら他人を本にするのに躊躇がないことは把握済み。問いただしても悪びれるどころか上から目線なのも分かっている。
態度が悪いなんて、よく人に言えたものだと思う。
彼が素直に白状せずとも、先に手を出したのが露伴だということは明白だ。
でなければ、必死にスタンドを制御しようとしていたAが、自分だけでなく他人への干渉を許すはずがない。
露伴の自宅に乗り込んだときのことが思い起こされて、腹の底で燃える炎が熱を増す。
引き下がらないというのなら、殴り足りなかった分も今お見舞いしてやろうか。
「そこまで!!…です!」
仗助にとって予想外だったのは、Aが割り込んできたことだった。
クレイジー・ダイヤモンドやスタープラチナを前に固まっていた様子からして、てっきり仗助に任せて引っ込んでいるものだと思っていたのに。
まるで露伴を庇うように腕を広げたAは、自分を襲った相手に頭を下げ、仗助の手を引いてその場を離れた。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時