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Aは自分のスタンドをじっと見つめた。
名付けの由来を彼に尋ねようとしたとき、声が聞こえたような気がした。
「……『レイヴィング・ナイト』」
頭の中で響いた言葉を繰り返すと、スタンドは静かに消えていった。
◇◇◇
滞在先のホテルに戻る承太郎に合わせて、Aも仗助の家を出た。
仗助が送っていくと申し出てくれたのを、Aは何度も重ねて断る必要があった。
Aの家は同じ住宅街にあり、歩いても5分程度だ。
彼が「それでも」と自分も玄関を出ようとしたのは、Aのスタンド使いとしての危うさを見てのことなのだろうが、放課後からの数時間でどっと疲れていたAは、早く一人になってしまいたかった。
(矢で貫かれたのは、夢じゃあない。東方くんにされたことも、承太郎さんが教えてくれたことも全部)
地に足のつかない気分のままベッドに潜り込む。
部屋の暗さに目が慣れてからしばらくして、Aはそっと唇を動かした。
「レイヴィング・ナイト」
姿を見せて、と念じるように名前を呼べば、すぐそこにAのスタンドはいた。
これは、Aを害するものではない。
Aの精神力が形作った、言わば己の分身。
恐る恐る手を伸ばす。
触れたのは頬。触っている感触はするけれど、熱いとも冷たいとも感じない。
自分の体温に触れているみたいに、手のひらに馴染んでいる。
例えこのスタンドが常識を覆す能力を持っていたとしても、Aに何かをするつもりはない。
教えられたように上手くコントロールして、ないものとして扱えば、今日のような出来事とは無縁の、今まで通りの生活ができるだろうか。
Aはゆっくりと目を閉じた。
それは叶わない願いだと、自分の中の何かが告げている。
とりあえず、明日は東方仗助に会わなくてはならない。
いろいろと迷惑をかけたのだから、改めて謝罪をするべきだろう。
眠気の波が寄せてくるのを感じる前に、Aの意識はぷつんと途切れた。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時