[東京喰種]喰べたいけど喰べたくない。4[月山習]

165. ページ30

・



時は流れ、現在。



「さっみー……。早く帰って寝たい……」


「家にいるときは寝てばかりだね」


「睡魔には勝てないね」



隣を歩く習に言う。


冬は家の中あったかいから余計眠くなる……。


そう思いながらコートのポケットに手を突っ込む。



突然、目の前が白く光った。



あれ……この感覚、前もどこかで。




「堀じゃないか!」



習の声で我に返り、カメラを構えて立つ人物を見る。



「ちえちゃん!?」


「お久しぶりだね。二人とも」



昔に比べてだいぶ小さくなったように思える。


……こんなに小さかったっけ。



「月山君とは何回か会ったけど、Aちゃんはほんと久しぶりだね。大きくなった?」



質問されながらもフラッシュが焚かれる。



「最後に会ったのは高校生だっけ?2年生くらいかな」



何か言う間もなく、ちえちゃんの質問攻め。


呆気にとられていると、習が笑った。



「giocoso!Aがこんなにも困るとはね!」


「A?呼び方変わった?」


「そうさ。いずれは結婚するのだから」



頭を抱える。


こう改めて言われると……。


恥ずかしさで死にそう。



「……いつの間にそんな関係に?」


「ああああああ聞かないで!!」


「結構前だよ」


「お前も答えるな!!」



どうにかしてこの二人。


あたしがどんなに制止しても話は止まらない。



耳を塞いで後ずさり。


何も聞こえない何も見えない。



あたしは何も知らない。




振り向かずにあたしの腕を引っ張った習。



思いのほか力が強く、習に抱きとめられる。




「だろう?」


「わー、本当だ」


「やめて!撮らないで!!」



シャッターを切るちえちゃんに叫ぶ。


止める気配がないので手で顔を隠す。




・

166.→←164.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す