[東京喰種]喰べたいけど喰べたくない。3[月山習] (ページ32)

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匂いを辿って走る。

…近い。どこだ。

たまたま近くの路地を見ると、江利らしき人影。

「江利!!」

呼んでも振り返らないが、あれは江利だ。

くっそ……。

マスクを出し、再び走り出す。

近くに行くと、あたしに気づく喰種。

「こいつの知り合いか?」

「ダチだよ」

気持ち悪い笑みを浮かべたそいつ。

「人間と友達?どーせ喰う気だったんだろ?」

「はぁ?んなわけねーだろカス。こいつ喰うならてめー喰うわ」

「知ってるか?人間と喰種は共存できないんだぜ」

眉間にシワが寄る。

「うっせーよ。そいつ離せ」

「これは俺の獲物だ」

「獲物なんかじゃねーよ……」

赫子を出して壁を駆け上がる。

野郎があたしを見失った隙に落下してかかと落とし。

そいつの手が江利から離れたのを確認して抱きとめる。

「……失せろ。殺すぞ」

「お前…隻眼か?」

「だったらわりーかよ」

「……くそっ」

相手がよくないと判断したのか、背中を向けた。

「誰に手出してんだよあのクズ」

「……A…?」

ばっと下を見る。

揺れる江利の視線とぶつかった。

震える手でマスクを外される。

あたしの目を見て、江利の瞳が大きく揺れた。

「喰種……なの?」

「……ごめん。今まで黙ってて。そんで、今までありがとう。……じゃあな」

「A!!!!」

江利に背中を向けて走り去る。

こみ上げてくる熱い何かを堪えて走る。

ばれてしまった。

もう一緒にはいられない。

長いような、短いような。

「……くそっ…!!」

家に転がり込む。

そのままベッドにダイブした。

枕に顔を押し付け、声を押し殺して叫ぶ。

ばいばい、江利。

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