[東京喰種]喰べたいけど喰べたくない。3[月山習] (ページ29)

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クレーンゲームの前で景品をじっと見る。

やばい…。これすげー取りてぇ。

「やるの?」

「やりたい。…これいけるかも。やるわ」

100円を投入して操作する。

一回で取れなければ諦める。じゃないと破産する。

あたしが狙っているのはでかい犬のぬいぐるみ。

なんとなくマスクに似てるので欲しくなった。

マスクは犬じゃなくて狼なんだけど。

「……お!?お!?」

アームが胴体を捉えた。

ゆっくり持ち上げると、胴体も持ち上がる。

来るかもしれない。

無事取り出し口まで来たぬいぐるみに手を伸ばす。

「来たわ」

「Aなんでもできるな!」

「高校生の時毎日のようにゲーセン行ってたからな」

江利と。放課後に二人で。

あの頃はすることなかったし。バイトない日はほとんど行ってた。

「そういえばお前時間大丈夫か?」

腕時計を見ると17:50。

ちょっと遊びすぎた気がする。

「今何時?」

「18:00前」

「あ、じゃあもう帰らなきゃかもだ」

「わかった。送ってくよ」

建物から出ると、吹き付ける冷たい風。

寒くなったなぁ。

さみぃ!と言いながら大地がまくっていた袖を下ろす。

「なんで今日暇になったの?」

見上げられて苦笑い。

「いやー、習と約束してたんだけどさ。急に行けなくなったって言われたから」

「何それ。月山の兄ちゃんが来てたら俺とは遊んでくれなかったってこと?」

「どうだろうな?」

「……まぁいいや。でも感謝しなきゃだな!」

「感謝?」

「来なかったから、今日Aと遊べたんだろ?しかも一人占めできたし」

嬉しそうに笑った。

「じゃあ今日は大地とのデートだな」

「デート!?」

「おー」

「月山の兄ちゃんに飽きたの!?」

「ぶはっ、それはないわ」

だから君はあたしの彼氏にはなれないのだよ。

「A好きなのに」

「いつかあたしより好きな子できるでしょ」

できてもらわないと困る。

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