[東京喰種]喰べたいけど喰べたくない。3[月山習]

107. ページ17

・



習の風邪は一日で治った。


治ってもらわないと困るからね。よかった。



で、今はどこにいるかと言うと。



「……なんであたしまで」


「リトルレディの付き添いだろう?」


「そうだけど…」



ヒナの付き添いで習の家に来ている。


解せぬ。何故あたしが。



つーかバイトだったはずだぞ。



トーカに「Aが行け」と言われて断れなかった。


抵抗はしたんだけどね。




「すごい……!」



グランドピアノを見て感嘆の声をあげたヒナ。


くるっと振り返る。



「Aお姉ちゃん、弾ける?」


「…………」



笑顔で首を横に振る。


弾いたこともないし弾けるとも思わない。



「弾けないのかい?」


「……歌は歌えるんだけどピアノ弾いたことないし」



それより、まず楽器やったことないし。



「早くヒナに教えてやって。あたし適当に暇つぶしとく」



このために来たんだから。


だだっ広い広間を歩く。



……しかしいつ見てもすげーなこの家。


金持ってる奴は違うわ……。



聞こえてくるピアノの音色。


今弾いてんのは習か。



楽器とかそんな繊細なことできる気がしない。



まぁ、あたし繊細じゃないしねー。




そんなことを思いながら本を選ぶ。


この一面の本棚最高か!



これだけで来てよかった、と思うあたしは単純なのだろう。




「A、弾くかい?」


「いや、今はいい。本読んでるから。あとでな」



本から目を離さず答える。



「Aお姉ちゃん弾くんだね!」


「うん、弾く弾く」



声は聞こえているが内容は頭に入ってないので適当に頷く。



……今思えばちゃんと話聞けこの野郎、とこの時の自分に言いたくなる。





・

108.→←106.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す