やすくんと年下組 part11

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安田side


「お仕事大変やった？疲れたやろ」

「うん。…でも章ちゃん会えたから、元気でた」

にこっと笑って頭をなでられ、きゅうんと胸が締まる。…もう、こーゆーことされたら、勘違いしてまうよ…。


「演奏の時間は、終わってもうたか…」

「錦戸さんのためやったら、もっかい歌うよ」


ギターを持ち直すと、錦戸さんは嬉しそうに地面に座った。


今日歌うのは、頑張る社会人への応援歌。

僕の作る曲は、錦戸さんと出会い、恋をしたことで大きく変化した。愛しさ、わびしさ、切なさ、励まし、慰め…色とりどりの感情が音や詞を生んだ。


…こちらを見つめて、時々聞き入るように目を閉じる貴方が、好き。どうしようもないくらい。


最後の音が響き終わると、錦戸さんは拍手をして、


「すごくよかった。やっぱ章ちゃんの歌が好き」

ってまた綺麗な顔をほころばせた。


それから雑談をする。錦戸さんが僕を引き止めてお喋りするのは、夜の9時まで。遅くなると危ないから…って。


過保護かもしれんけど、嬉しい。錦戸さんが僕の身を心配してくれるのは。


「…あ、章ちゃん。今日のお金な…」

「ええっていうとるのに」

「うん、せやから今日はちょっと、特別に」

僕は錦戸さんからはあんまりお金をもらいたくない。純粋に、歌を聴いてほしいだけで。

錦戸さんは、鞄から雑貨屋の袋を取り出し、渡してくれた。


中身は、グレーのあったかそうな手袋。


「章ちゃん、いつも帰るとき、してへんやろ。ギタリストやし、手は大事にしとかんとって…結構、選び抜いたんやで」

そう言って、照れたように顔半分を片手で覆う。


…僕のために。選んでくれたんや。

錦戸さん、貴方は僕のこと、どう思ってるの？

僕の気持ちは、どのくらいわかってるの？


ありがとうと言って笑うとさらに照れてしまう彼を見ながら、いつか好きと伝えたいって、密かに思った。

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