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21. ページ22

<怪我で本調子じゃないだろうしゆっくり休め>

退院し携帯を起動すればそんなメッセージがグルさんから届いて。謝罪と共にトントンさんの事を聞いた返信を送ったが帰ってくることは無く、私は帰宅して大きめのシャツをワンピース代わりに着て後は下着、の姿で自室のベッドに転がった。

『…部屋、片付けないとな』

部屋には猫用ベッドやおもちゃが転がっている。

もうこの部屋にあの子はいないのに。

おやすみ、と擦り寄ってくれるあの子はいないのに。

『………』

人としての彼も、猫としての彼もいない世界。

心にぽっかり穴が空いたようで、それから逃げるように私は目を閉じ眠りへ落ちていった。

※※

____薄暗い部屋の中、ピンポン、とインターホンの音が聞こえた。

『…だれ』

帰ってきてから半日経ったが何も口にしてない喉は乾き、体は鉛のように重い。窓の外は既に夕方でオレンジの明かりが差し込んでいた。

正直、起きたくない。

____ピンポン

だけど、何となく出なきゃいけない気がした。

『…だれ…』

重い体を起こし、覚束無い足取りで壁伝いに玄関へと向かう。新聞勧誘とかだったら殴ってやろう。そう思い鍵を開けてドアノブを押した。

『…なんか、よう…』
「…久しぶり、やんな」
『………?』

夕陽が目に染みて顔が見えない。眩しい、と手の甲で目を擦れば相手の男性はフッと笑った気がした。

『…?だ、れ…』
「夕陽が眩しいんか。んじゃ、ちょおごめんな」
『え、ちょ』

大きな手が背中に回され腕を取られ押し込まれる。なんだ強引だな、と先程より見えやすくなった目でどんな顔が拝んでやろうと顔を上げれば、途端に胸にとある感情が滲んだ。

「…俺、覚えとる?」
『…う、そ』
「嘘やない」

ぎゅ、と背中に回された腕に力が込められ開いていた距離がゼロになる。

とくんとくんと聞こえる鼓動

腕から伝わる懐かしい、心地よい温もり

そして私の名前を呼ぶ優しい声

あぁ、間違いない____


『…トントン、さ…っ』
「ん。ようやっと、会えたなぁ」

懐かしむような、安堵するような声に私はボロボロ涙を零しながら胸に広がる感情を噛み締めた。

あぁ、そうだ

思い出した

私は貴方をずっと____愛していた。

『トントン、さ…っトントンさん…っ』
「ん。おるで、ここに」

子供のように泣きじゃくる私を、彼はずっと優しい笑顔を浮かべて抱き締め頭を撫でてくれた。

.

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名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←(嫌なコメントであれば消してください) (8月21日 16時) (レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです!こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では?と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました! (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや!』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒瀬 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年6月7日 7時

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