20. ページ21
真っ白な空間で目を閉じ横たわっている私。意識はあるのに寝ている、という不思議な状況に気が付くも瞼は重く開けられそうにない。
なんだこれ、明晰夢？
なんて思い早々に諦めただ横たわっていると、誰かの手が頭に乗せられ優しく撫でられた。
この、手は…
「________A」
トントン、さん…？
「怪我まで守れんくてごめんな」
ううん、いいの。貴方が守ってくれたから。
「あの日俺を拾ってくれてありがとうな」
貴方が私にしてくれた事を返しただけですよ。
「…ずっとあの日から傍におってくれて、ホンマにありがとう」
するりと頭を撫でていた手が頬へと滑り、指の背で撫でては名残惜しそうに離れていった。
「…大好きやで。今も、ずっと」
唇に柔らかい感触がして、心の中で『え』と声を漏らす。
親愛だとしても女性の唇にキスをするものでは無い。
つまり、彼は…
「…また、な。A」
彼の気配が次第に薄れていく。
待って、まだ私、貴方に伝えなきゃいけないことが____…
※※
『っ、待って！トントンさん！』
ガバッと起き上がれば、途端に襲ってくる頭痛。それに顔を顰め辺りを見回せば、真っ白い部屋に薬品の匂いからここが病院なのだと直ぐにわかった。
裸足のままベッドから降り廊下を見渡す。ここはどうやらトントンさんが入院している病院らしい。
「あっ、猫宮さん！」
『(トントンさん…っ)』
看護師さんに追いかけられるも足は止めず、向かう先は彼の病室。
そこに辿り着き扉を開けるも彼の姿は無く、中はもぬけの殻だった。
『…なん、で…っ、はぁっ』
彼が寝ていたハズのそこには何も残っておらず、寝ていた温もりも何も無い。私が過ごしていた日々がまるで夢だったかのようで、それに絶望していると看護師さんが追いつき肩を掴んだ。
「猫宮さん…！先生をお呼びしましたので、戻りますよ…！」
『すみません、ここに入院されてた方って』
「…病院の規則により、お教えする事は出来ません」
『そんな…』
お願い、誰か夢じゃ無いと言って。
検査の為一日入院した私は項垂れながら病院のベッドに沈んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 831人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←（嫌なコメントであれば消してください） (8月21日 16時) (
レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです！こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では？と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました！ (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや！』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
