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#110 ページ3

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「そういえば、そらるさん。」

「何?」


ヘッドセットを外して、真冬がこっちを見る。その目は俺の手と顔を何度も行ったり来たりしていた。


「婚約指輪、どうしたんですか?」

「は?」


まさか、というような何かを悟ったような顔をした真冬を一蹴して、俺は首元に手を這わせる。着ていたワイシャツの襟の裏、指先に触れた金具をそっと引き上げる。

銀色のチェーンと、それに通された指輪がえりの裏側から顔を出す。


「…あ。」

「俺はネックレスにさせてもらってるの。撮影とかあるし、おおっぴらにつけられないからさ。梓は指につけてるんだけど…」


部屋の電気が跳ね返って、指輪がキラリと光る。
真冬はそれをまじまじと見て、目を細めた。


「幸せそうでなによりです」

「そりゃどうも」


クスクスと笑って、真冬はまたヘッドセットをつけた。
ヘッドセットの隙間から漏れる音楽を聴きながら、指輪をじっと見つめる。
脳裏に浮かぶのは梓の笑顔で、少し頬が緩む。

…視界の隅でスマホが震えたのが見えた。
内容はわかりきっていた。
気持ちが沈んでいくのが分かる。


「……」


画面に表示された文章に嫌気がさした。
先ほどまでの幸せな気持ちを返してほしい。


[こんな人がそらるさんの__]



[犯罪になりかねないと__]



[有害リスナーが__]


……言葉が重い。


「ちょっと、そらるさん」

「…え、あ、何?」

「ここの部分、なんだかおかしい気が……って、そらるさん。どうかしたんですか…?」

「え?」

「顔色、悪くなった気が…」


真冬の心配そうな顔が視界いっぱいにうつる。
瞳が揺れ動いている。
言った方がいいのかな。
でも、まだ、


「大丈夫だよ、最近眠れてないだけ。」

「…もう〜。また梓ちゃんに怒られますよ?今日はいいので、早く帰って寝てください」

「うん、うん…ごめん」


真冬に背中を優しく押されて、そのまま真冬の家から出る。
ズキズキと痛んできた頭に、長いため息がふうと口から出ていった。


梓と暮らすための準備や、俺の活動のこと、最近のリスナーによる目に余る行為への対策……
やることがたくさんあって、ぐるぐると目が回りそうだ。


「梓…」


スマホを取り出す。
画面がふっと明るくなって、画面いっぱいに笑顔の梓がうつった。

声が、ききたい。
相談がしたい。

だけど、


「大丈夫…だよな」


自分で解決しなきゃ。






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こん - 無理しない程度に頑張ってください!応援してます! (2018年10月9日 18時) (レス) id: bc3ee8c138 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:MiKU | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年9月21日 22時

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