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「それからずっと不機嫌なんや?」
『不機嫌じゃないです』
「いや、めっちゃ不機嫌やん」
隣のデスクには眉間に皺を寄せながらサンドイッチを頬張る梓ちゃんがいる。
東京の彼方さん家から名古屋に帰って3日経った今でも、梓ちゃんは不機嫌なままだ。
理由は聞いたが、どっちもどっちというのが俺の気持ちだ。
「まあまあ、とりあえずその怒りをパワーに変えて仕事頑張ろうや?」
『だから怒ってませんて。』
そう言ってコンビニに売られているカフェラテを飲み干して、梓ちゃんはパソコンに向き合った。
不機嫌な梓ちゃんも可愛いが、やっぱりニコニコしてくれている方がこちらも接しやすい。
エンターキーの音が、いつもより大きく鳴った。
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時計は18時前を指す。
軽く伸びをして梓ちゃんはパソコンを閉じた。
『仕事終わったんで帰りますね』
「早いなあ」
『まあ、長引きそうな仕事は渡されないんで……』
カバンに荷物を詰めながら、梓ちゃんは苦笑した。
俺もちょうど仕事に区切りがついたので梓ちゃんと一緒に帰ることにしようかな。
「俺も仕事に区切りついたし、帰るわ。送ってくよ」
『ありがとうございます〜』
助手席に梓ちゃんを乗せて車を発進させる。
ランダム再生で曲を流して、そのまま夜の道を走った。
「そらるさんと話さへんの?」
『話すことなんてないですよ』
「……そらるさんってすぐ溜め込むやん。それを親身になって聞くのが、梓ちゃんやろ?」
『…そう、かもしれないですけど…』
今は、彼方も私も会わない方がいい気がするので。
と、梓ちゃんは悲しそうに言った。
俺は何も言えないまま、少しスピードを早めた。
ドリンクホルダーに立てかけたスマホが光って、17:51と表示する。
梓ちゃんのスマホが鳴った。
『えっ…?』
スマホを見た梓ちゃんの顔が強張った
「どうしたん?」
『彼方が…』
そらる≪@soraruru:自分のミスで一部の方を動揺させてしまったようで申し訳ないです ホントにただのミスで___≫17:51
そらる≪@soraruru:最近悩むことが多くて何をしてもうまくいかない日が続いていて 疲れてしまいました 愚痴ってしまってごめんよ 少しネット離れて元気になったらちゃんと戻ってくるのであんまり心配しないでください≫17:55
2018年2月11日。
そらるさんは、そうツイートして、ネット上からいなくなった。
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こん - 無理しない程度に頑張ってください!応援してます! (2018年10月9日 18時) (レス) id: bc3ee8c138 (このIDを非表示/違反報告)
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