幸せな家族のはなし３ (ページ38)

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智side

今の俺には、有難いことに仕事がある。

業界じゃそこそこ評価も上がってる。

だけど、どれだけ褒められても
難しい言葉を使って称えられても……

それが本心なのか偽りなのか
見えづらくなっていく。

そんな時だったと思う。

翔達が俺の作品を見てくれたのは。

上手だね

凄いよ

ここはどうなってるの？

智にぃって感じがする

これ好きだな

並べてみれば、在り来りな言葉。

だけどその素直で真っ白な感性は
俺にとってめちゃくちゃ救われた。

だって俺の弟達は
変な媚びや邪念がないから。

無知であるがゆえの純粋な感想。

それが4人も貰えるってことって
実は凄いことだと思う。

「だからこれからも
翔達は思ったことを言ってくれればいーの」

俺はいつもそれで助けられて、
自信が持ててるんだから。

そう言って翔の顔を覗けば渋々ながらも
「智にぃが言うなら」って素直に頷いてくれる。

「まあ実際、どれだけ知識入れたって
智にぃの才能に見合う言葉はないかぁ」

「へ？いやいや、そんなことない。笑
翔はさ、俺のこと買い被りすぎなんだよ～」

「えぇ～案外真剣にそう思ってるんだけど？笑」

既に酔いが回っている翔は
いつもより目が潤んで表情も柔らかい。

実際、酔って大きく変わるタイプじゃないんだけど
今は翔も時間を気にせず満喫出来てるからか
気が緩んじゃってるみたいでほわほわしてる。笑

「ね、智にぃ」

日本酒を入れていたグラスが空いた。

そして翔は俺の手をしばらく見つめたあと、
自分の指でそこにトントンと優しく触れた。