幸せな家族のはなし３ (ページ37)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:153,397 hit

［９－２］ページ37

智side

「そういえば智にぃの方は？
仕事、順調そう？」

「うん。実はね、大口の仕事が入った」

「え、凄いね。どこの会社？」

先日完成した作品がコンテストで最優秀賞を
取ったことがきっかけで舞い込んできた仕事。

収入の方も条件も申し分なく、
期限も来年の2月までと随分な優遇対応だった。

正直なんでそんな仕事が来たのかは分からないけど
一応4人を養っている分、文句はない仕事だ。

「えぇ？智にぃまだそんなこと言ってるの？
いい加減自分が有名な人だって自覚してよ、先生♪」

「こーら。その呼び方はやめて」

「んふ。ごめんごめん」

未だに慣れない……というか苦手な呼び名。

ろくに学校も行かず絵だけで
職につけただけの俺がセンセイだなんて。

小っ恥ずかしいし、笑っちゃうし
呼ばれてどう反応すればいいかわかんない。

けどそれが分かった上で翔はからかってるんだ。

まあ、いたずらっ子な顔してるのに怒んないで～
って俺を伺ってくる翔が可愛いからいいんだけど。

「その絵、完成したらまた見せてよ」

「うん。翔達には1番に見せるつもりだよ」

自分が絵を仕事にした頃から変わらないジンクス。

それは作品が完成したら、
まず1番最初に弟達に見せること。

そうしたらその作品は必ずいい評価を付けられる。

だから俺にとって弟達に見せることは
作り上げた作品の最後の仕上げのような……

そんな感覚だ。

「ね。俺らってさ、巨匠じゃないじゃん？」

「ん？そうだね」

「なのになんで見せてくれるの？
感想だって、上手とか凄いとかしか言えないのに」

「……んふふっ、え～、ふふっ、なにそれ？」

「む。俺変なこと今言った？」

当たり前を聞かれたような翔の疑問に
思わず我慢出来なくて笑ってしまう。

だって巨匠って……
突拍子もなさすぎない？笑

俺が翔達のことを
巨匠だなんて思ったことないのに。

俺は賢い感想なんて要らないのにさ。

技術的な評価は求めてないし。

だってそんなの後から嫌ほど付けられるから。

ただ。

ただ俺は

「翔達の、純粋な気持ちが欲しいんだ」

これに尽きると思う。