幸せな家族のはなし２ (ページ35)

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和也side

「どいてっ！潤！潤っ？！」

群がる人達をかきわけて潤へと駆け寄る。

見れば痛そうに眉を寄せて
ぐったりしたまま浅い息を繰り返す潤。

「潤！潤っ、大丈夫？頭だよね？！」

「っはぁ……うんっ、い、てぇ……っ」

目は開けないものの意識はあるみたいで
俺の声に反応してくれる。

そしたら学校にいた保健医が来てくれて
倒れたままの潤のバイタルを確認し始めた。

「今の状況分かるかー？
手足の痺れとかある？」

「い、や……ぐるぐる……するくらい……？」

「うん。そっか。多分軽い脳震盪だな。
よし、救急車来るまでに頭のアイシングしとこう」

テキパキと進められたあと、
潤は慎重にベンチへ運ばれて行く。

俺もあとをついて行こうと歩き出した時、
急に肩を叩かれて思わずその方へ振り向いた。

「和也、家族に連絡してほしいって！」

さっき友達になった子がその言葉と共に
置いてきたはずの俺の携帯を差し出してくれる。

多分持ってきてくれたんだ。

正直、混乱してる俺は
潤が心配で他に気が回らないけど。

チラッと運ばれていく潤を見つめて、
携帯のパスワードロック解除する。

それからやけに動かない指を
何とか移動させて電話帳をタッチ。

プルルルル……ってコール音が
物凄く長くて、早く出てと携帯を握りしめた。

プルルルル……プルッ……

『……はい、もしもし和？』

「っ、あ、智にぃっ？」

『うん。どうしたの？』

聞こえた智にぃの声に何故か
今になって涙が浮かぶ。

ヤバい分かった。

俺今怖くて混乱してるんだ……

どうしよ。

泣きそう。

「智にぃっ……潤が……潤がっ、っ、ね……っ」

早く伝えたいのに伝わらない。

それどころかさっきの光景が
蘇ってきて喉が締まって反響しない。

『和落ち着いて？ね、近くに大人の人いる？』

「んっ、代わる、ごめっ」

『大丈夫だよ。和、落ち着こうね。
じゃあ、ちょっとだけ話聞くから、代わって？』

震えた手で近くにいた監督に声をかけて携帯を渡す。

俺の様子を見た監督は何も言わず携帯を
受け取ってくれて、智にぃへ事情を話し始めた。

そのあと智にぃは『すぐに行く』と電話を切り、
数分後岡田くんの車でやって来てくれた。

それから智にぃは潤と着いた救急車で病院へ。

俺は岡田くんと一緒に家へ帰宅して
ひとまず大丈夫だという連絡を貰ってから
早上がりの雅紀にぃの帰りを待つこととなった。