［４−４］ ページ34
和也side
「取りに行けよ潤ー！」
塁に立つ先輩が潤へエールを送る。
集中している潤はそれに答えることはなくても
ピッチャーのフォームが始まれば途端に
グランドは緊張の糸が張られていって。
そして。
相手のピッチャーがブンっと勢いよく
キャッチャーミット目掛けてボールを投げ込んだ。
途端に素早い潤の振りが行われる。
「いける」
タイミングを見つめていた俺は
それだけ言って固唾を飲んだ。
すればほぼ同時にカキンッと響いた
金属バットとボールのぶつかる音。
その後すぐにボールは前方へと飛ばされ、
一斉に選手達が動き出した。
「頑張れ〜！」
ボールはめちゃくちゃいい所を通って
外野まで飛んでいってる。
その間にバッドを放り投げて
全力疾走する潤の表情は強気そのもので
思わず俺も声が上がった。
エールを送っていた先輩がホームベースを踏んだ。
これで点数は3-1。
潤も一塁を抜けて
二塁に足を付けることが出来た。
少しずつ勝利が見えてきた勝負に
クスッと笑って潤に手を振る。
そしたらもちろん潤もこちらを見てくれて。
ニカッてイケメン笑顔を頂けたもんだから
俺も笑ってグーサインを出した。
「んふっ」
これは智にぃ達に送ってやるべきだ。
余分に撮っておいた動画を見返して、
いいサイズに切り取って。
んでじゃあその動画を送りましょうってとき。
またグランドのほうからカキンッて音がして
思わず俺は顔を上げた。
見れば次の3年の先輩が
一塁方面へヒットを飛ばしたらしい。
それを見た潤がすかさず
三塁へ突っ込んでいく。
間に合うか、間に合わないか。
ギリギリなところでも
潤の速さなら大丈夫だと確信してる。
ドキドキしてる高揚感を抑えながら
チラッとボールを拾った相手選手へ目を向けたとき。
その投げたフォームの
嫌な手首の曲がり方が見えた。
「え……待ってっ、潤！」
ガンッ！
声を上げた瞬間に三塁へたどり着きそうだった
潤の左側頭部へ、強烈な玉がぶつかる。
同時に俺の足元へ放り落ちたハンディ扇風機。
視界の中にはドサ、っと倒れ込んだ潤がいた。
「潤ッ！！！」
司令塔が指示するまでもなく体が走り出す。
その間も潤へ群がる選手や監督コーチ達。
「頭だな……救急車呼べ！」
様子を見ていた監督の声が広がり、
コーチ陣が連絡を取るようその場から離れていく。
混乱に体から嫌な汗が吹いた。
潤が……
俺の目の前で、倒れた……
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作者名：あやりゅ。 | 作成日時：2019年6月19日 0時
