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切なさはいくら短針が進もうとも私の中の短針を進めてはくれなかった。
夏休みが終わった大学、私は1人になった。
深田にも湧にも会わないように講義を受ける時後ろに座るのを辞めて1番前に座るようになった。
深田と湧は未だに一緒に授業を受けているのかも分からない。
結局あのあと私の荷物は深田によって返されることはなかった。
ピンポンがなって急いで外に出た先には困ったように笑った黒ちゃんが両手に荷物を抱えて立っていた。
紙袋に丁寧に入れられた服は全部深田の匂いがした。
泣いちゃダメと堪えた涙は横に座った黒ちゃんが頭を撫でたことによって崩壊した。
私は人を傷つけて困らせてばっかりだ。
「A。」
講義が終わったあと廊下で待っていた黒ちゃんと大学ではほぼ初めましてな織山くん。
私を真ん中にして座ったベンチ。
黒ちゃんが私の顔を覗き込む。
「Aちゃんと食べてる？」
「んー、お腹空かない、」
「それでも、ちゃんと食べないと、お腹」
「Aちゃん、俺はさ深田がいいと思う、」
「え？」
黒ちゃんを遮るように放った織山くんの言葉に少し耳を疑った。
今まで織山くんに直接恋愛の話をしたことは無かったから。
「今、寂しい？それは元木に会えないから、？それとも
深田がもう隣にいないから？？」
「A俺さ、5人でイツメンでよかったよ。
すっげえ楽しかったし、大学生になっても十分青春できた、
だから、俺はみんなに幸せになって欲しい。
そのためにもAが素直になってくれないと。」
私の心にグサグサと刺さるふたりの言葉に私は思わず涙が止まらなくなった。
「私泣いてばっかだなあ、」
「それはAちゃんの心が綺麗からだよ、もっとAちゃんはわがままになっていいんだよ、
人間は悩んで悩んでの繰り返しなんだよ、正解なんてない」
心が浄化されたようなそんな気がした。
1人で抱え込んでたことが2人にはバレバレでやっぱり人間って一人で生きていけないものだなって改めてそう実感した。
「でも。やっぱり俺は深田がいいと思う、」
その織山くんの言葉に「もうおり！今雰囲気よかったのに！！強要すんな！」って黒ちゃんの説教に久しぶりにちょっとだけ笑えた。
私の中の止まっていた短針はまた時間とともに進み始めたような気がした。
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作者名：にゃん | 作成日時：2023年3月23日 18時
