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「んあー…。あんな、君前からあそこでマッチ売ってたやろ?」
あそこ、と指差す先は確かに私がずっとマッチを売っていた場所だった。苦笑いのまま彼は話し続ける。
「俺、なんていうかわからんのやけど、初めて見た時からずっと気になっててん。
この子若いのに何でこんなとこで売ってるんやろ、とか、俺と同い年かな、とかどんなんが好きなんやろ、とか」
離す機会が無くて触れたままの指先を彼は動かして、ソッと私の手の上に置く。それにとくん、と心臓が跳ねた。
「簡単に言うんやったら、そうやね。好きになってしもてん。話したこともないのに。俺、人見知りやからそれに気付いて尚更話しかけれんくなって」
ゆっくりと握られる手。雪に触れて冷たいはずの体も、手も、全部がさっきまでの寒さが嘘のように熱くなる。
「やっと今日、話しかけれたんやけど…。あっ、ごめん、知らん奴にこんなん言われても困るやんなっ!それ、あげるから!ほんまにごめんっ、俺のこと忘れてなっ」
焦ったような声音と、ぱっと一息の間に離れる温もり。
「やっ、まって!」
__自分でも一瞬何をしたのか分からなかった。見えるのは艶のある黒髪と、灰色の雲と、白色の雪。そしてなにより目の前には大きく開かれた黄と蒼の瞳。
それから、ずっしりとした重みが体にあって。
「…ご、ごめんなさい!!」
「んああっ!ごめん!!」
謝って体勢を直してから、私が服の裾を引っ張った拍子に倒れてきた彼の下敷きになったんだと気付く。
さっきとは比べものにならないくらい騒がしい心臓。破裂しそうなほどドキドキしてて、もしかして今日が私の命日?だなんて言えてしまうくらい。
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