【銀魂】ロマンスを騙る【短編集】

8日前に振った女に避けられてるんだが？って知恵袋に訊いてくれよ。逆に何事も無かったかのように振舞えと？振っても振ってもダメージ与えられないなんてまるでゾンビじゃん。

「こっちのほうがムカついてきたんですけど……乙女心読解力ヤバいですよ。進研ゼミ紹介しましょうか」
「女だとしても乙女ではねえだろ」

……ゾンビかもしれない。フラレたばっかだというのに、こうしてただ会話できているのが嬉しい。好きなひとが何割か増しでカッコよく見えてしまうフィルターもまだ機能してる。

『言ったとおりだ。お前の気持ちには応えられない』

そう、わたしの気持ちには応えられないって言われたんだよ。自戒。てかわたしの気持ちって一体なんなんだろう。別にコイツとAがしたいとかBを経てCをキメたいとか同じ墓に入りたいとかそういうわけでもない。既に結構満たされちゃってる自分がいる。

でもダメだ、これ以上コイツといたら色々と悪化して食べてしまいそうな気がする。……ゾンビだもん。

「やっぱもう全然好きじゃないです、はい。好きじゃないんで避けてます！ありがとうございました！さようなら」

自分に言い聞かせるようにそう告げると、掴まれていた腕が解放された。「そうかよ」なんて、ちょっぴり寂しそうなフラレたみたいな顔をして踵を返すからずるい。ずるすぎる。

「……どう考えても選択肢間違ってますよ？ギャルゲーならアナタもうめった刺しにされてますからね」
「…………めんどくせえな。」
「なんでだろう、好感度下がってく」

思わず奴の着流しの帯を掴んでしまった。奴がどんな顔をしているのかわからないけど、わたしの頬はゆるゆるだった。最悪だ。


「とっとといい男見つけろよ。顔だけはいいんだからいくらでも選択肢あるだろ」
「……いい男ってなんですか」

さらっと顔がいいとか爆弾を落とされるたびにゾンビは死ぬ、そして復活してはどんどん強くなってしまう。

「土日休みでホワイト企業に勤めてるお前のこと幸せにしてやれる男」
「……ホワイト企業に転職したらどうです？」
「お前が男の趣味変えろ」
「あ〜もうどっか消えてください悪霊退散」
「お前友達いねぇだろ。俺が消えて困るのはテメーだろうが」
「それ友達から始めましょうってことですか」
「もう友達だろうが」


「あ〜！嫌い！」

背伸びしてマヨネーズ色のマフラーを引っ張って、冷たい唇に噛みついて、テンカウント。Aは済んだ、２ラウンド目はゾンビの勝利だ。どうだ、ざまーみろ。


＜完＞