すぺしゃるしーと Ⅲ (ページ9)

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The 89th seat. ページ9

自室を出て隣のフロアに向かうと

二宮がすでにプリンを食べ始めてた

Aも潤との話が終わったのか

フロアに戻ってきていて

俺もそーっと、その輪のなかに入って

プリンを取って食べ始めた

うっまっっっ！

どこから聞きつけたのか

気づいたら雅紀もいるし…

みんなでワチャワチャしてたら

それを眺めてるA…

たぶん、寂しいのかなぁ

だってもうすぐカナダ行っちゃうし

『なに？もう、ホームシックになっちゃった？行くのやめる？今ならまだ間に合うよ？』

ニッコリ笑うと、ビックリしたAと目があった

「……」

ドン＿＿コロコロコロ＿＿コツン…

何かが足先に当たって、視線を落とすと
空っぽになったプリンのカップだった…

「翔くん？Aちゃんを、あんまり困らせないでね～。今、やっぱり行かない。なんて言われたら、カナダ(向こう)パニックになっちゃうから」

分かってるよ

別に冗談で言っただけじゃん

『はは、困らせる…ね…』

俺は、Aにとって困らせるだけの存在なのか？

潤と目が合って…
というよりは睨み合っていて

しばらく無言で、お互い譲らず睨み合っていたら

空気に耐えられなくなったAが

「あの…私、今さら行かないなんて、言いませんよ？」

って…うん、分かってる
お前は今更、投げ出すようなヤツじゃないし

そしたら、潤がさ

「まぁね…Aちゃんには目標あるから、今更そんな事、言わないって分かってるけど～」

いかにも、俺は理由知ってるし
って、勝ち誇ったようにニヤリと笑った

『目標？』

「ちょっと、松本さん！」

「ごめんごめん。まぁ、あと数日だし楽しく過ごそうね♪」

ペロッと舌を出してフロアを出て行った
潤の背中を追いかけた

『ちょっ、潤！待って！』

「何？Aちゃんの目標のことなら、聞かれても答えられないよ？」

どうして、コイツにはいつも俺の考えてる事とがバレてんだ？

『分かってるよ…あの、Aの事よろしくな…』

「ふふ、彼氏さんみたい(笑)まぁさ、任せてよ。とりあえず壮行会、笑って送り出してやってよ」

そうだよな

Aが笑って、行ってきます

って言えるように、送り出してやらなきゃな…