すぺしゃるしーと Ⅲ (ページ23)

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The 103rd seat. ページ23

廊下の邪魔にならないところで

用件をすませて席に戻ると

さっき俺が座ってた席の隣に

見たことある猫背が見えた

「おつかれーっす」

『えっ！？二宮なんで居んの？』

「俺が居ちゃダメっすか？」

『いや、ビックリして…』

「何か、良いことあったんすか？」

『いや…何もないけど』

隣に座って

残りのビールを飲み干して

おかわりを頼んで待っていたら

「翔さん、俺達に仕事押し付けて、見送り行ったでしょ…」

『えっ！？なんで？』

何故バレた？

「あいつの香りがする」

あっ…あの時か…

抱き締めた時に移ったのか？

『見送り行ったよ。ごめん、悪かったと思ってる』

「じゃぁ、写真撮らせて。浮かれてる写真、天音さんに送るから。翔さんのせいで、俺達見送り行けなかったんだから」

そう言って、スマホを取り出した二宮は

俺が“ごめんなさい”って

テーブルに土下座みたいに頭をつけた所を

数枚撮って、ニヤニヤしてる…

「これをしばらくネタに、ルービーごちそうしてもらおーっと」

ウフン♪ってウインクしてきた

厄介なヤツに弱味を握られた…

けどイヤだなぁ～って思えないのは

コイツの人間性なんだろうな

しばらく仕事とかプライベートの話をしながら飲んでると

一口飲んだら“カシャ”、一口食べたら“カシャ”

『なぁ、お前、写真撮りすぎじゃね？(笑)もう、謝ったじゃん』

「ん？あぁ、翔さんの横顔…綺麗だな～って♪今まで隣に座ってたけど、なーんで気づかなかったんだろう！」

『恥ずかしいからヤメロよ～！』

あの日…智君の所で飲んだ日から

一緒に昼メシ食った時

みんなで飲みに行った時

会社ですれ違った時

二宮は俺の写真をよく撮るようになった

俺もだんだん慣れてきて

ピースとかノリノリで

ポーズを取るようになってたんだけど

その写真が

Aのやる気に繋がってたことは

だいぶ経ってから知ったけど…

『もっと、ちゃんとしたポーズしとけば良かったな』

つったら、

「普段の翔さんだから、いいんですよ」

って笑った顔が

俺のやる気に繋がってるってことも

今は内緒にしとこうかな